2017年度の豚肉自給率(重量ベース)が49・0%になり、過去最低だったことが分かった。5割を切ったのは、北米産牛肉の輸入停止で緊急的に豚肉輸入が増えた05年度(49・7%)以来、2度目。国内生産は14年以降の豚流行性下痢(PED)の影響が長引いている。その間に輸入量が急増し、国産シェアが低下した。政府は25年度の豚肉の自給率目標を58%と掲げるが、日本養豚協会は「このままでは達成は難しい。生産基盤の立て直しが急務」と訴える。

 農畜産業振興機構の統計を基に17年度の自給率を日本農業新聞が試算。1960年以降で最低だった。17年度は前年度より1・5ポイント、過去10年で最も高かった09年度(57・1%)より8・1ポイント落ち込んだ。これまで最も低かった05年度は北米で牛海綿状脳症(BSE)が発生。米国やカナダから牛肉の輸入が停止し、豚肉輸入が急増した異例の年だった。

 17年度の国内生産量は前年度比0・5%減の89万50トン。生産量は15年度以降増えていたが、17年度は3年ぶりに前年度を下回った。市場関係者は「関東地方を中心にPEDなど疫病で出荷頭数が減った」と指摘する。関東の畜産関係者は「再発する農場が多く、完全に終息できていない」という。PED発生以前の12、13年度の生産量は90万トンを上回っていた。

 農水省によると17年2月現在の農家戸数は4700戸。10年で3割(約2500戸)減と減少に歯止めがかかっていないことも影響した。

 一方、輸入量は前年度比5・5%増の92万5631トンと過去最多だった。

 東京都内の仲卸業者は「出荷減で昨夏の国産相場が高騰した影響で、大手スーパーが輸入に切り替えた」と明かす。国別ではカナダ産が14・7%増。輸出団体のカナダポーク・インターナショナルは「国産の供給が低下している間に、カナダ産がスーパーで定着してきた」と話す。

 日本養豚協会の志澤勝会長は「養豚業界は今が正念場。生産基盤の強化に向け、後継者対策や環境整備などに取り組む必要がある」と強調する。

 政府が閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」では、国産の生産の維持・拡大による自給率の向上を掲げた。

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