神奈川県平塚市のタクシー会社「富士見交通」の男性運転手(62)が、客として乗り込んできた男(20)の不審な様子に気づき、現金手渡し型の詐欺被害を未然に防ぐお手柄を挙げた。

 男を逮捕した茅ヶ崎署の管内では今年、特殊詐欺が48件発生しており、山口達夫署長は6日、スピード逮捕に貢献した運転手に感謝状を贈る。

 同署などによると、男は5月19日、「祖母の家に行く」と言ってJR茅ヶ崎駅前からタクシーに乗り込んだ。買ったばかりのスーツを着た男は、茶髪にピアス姿。運転手は、携帯電話で指示を受けるように話し続ける男の様子をあやしんだ。

 決め手になったのは、男が行き先の住所を読めなかったこと。2年ほど前にも同様の事件で容疑者逮捕に協力した運転手は、男がタクシーを降りるのと同時に会社を通じて通報した。

 駆けつけた署員が男を署に連れていって事情を聞いたところ、「上の人から言われ、知らないおばあさんから200万円を受け取りに行く予定だった」などと供述した。男は住所不定で、漫画喫茶などで寝泊まりをしていたといい、同署は詐欺未遂容疑で逮捕するとともに、現金の受け取りを依頼した指示役がいるとみて、捜査を続けている。

 同署は特殊詐欺被害の多発を受け、茅ヶ崎市のごみ収集車など38台で注意を呼びかける取り組みを今月から始めたばかり。板垣武志副署長は「社会全体で高齢者を守ろうという気持ちがありがたい」と運転手の活躍をたたえ、「不審なことに気がついたら、ためらわずに通報してほしい」と呼びかけている。

2018年06月06日 09時26分
YOMIURI ONLINE
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