2018年6月22日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180622-OYTET50012/
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 全身の筋肉が衰える神経難病「筋 萎縮いしゅく 性側索硬化症(ALS)」で、病気を引き起こすとされる異常なたんぱく質を除去する手法を開発したと、滋賀医科大や京都大などのチームが発表した。

 根治が難しいALSの治療法につながる可能性があり、論文が英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

 ALSは、運動神経が徐々に死滅し、歩行や呼吸が困難になる難病。有効な治療法はなく、国内の患者数は約9500人とされる。

 チームは、患者の神経細胞で、ALS発症の一因とされる異常なたんぱく質が蓄積していることに着目し、このたんぱく質を分解する「抗体」を開発。ただし、大きすぎて細胞に直接入らないため、抗体をつくる遺伝子を、運び役となる小さな物質に組み込んで入れる手法を考えた。

 病気の状態にした人やマウスの細胞内で抗体を作らせた結果、たんぱく質が分解・除去され、細胞はほぼ生き残った。一方で、抗体のない細胞は48時間後に4割が死滅した。

 アルツハイマー病やパーキンソン病など様々な神経難病でも、この手法が応用できる可能性があるという。チームの 漆谷真うるしたにまこと ・滋賀医科大教授は「ALSの進行を抑える治療の実現に向けた大きな一歩だ。できるだけ早く患者に届けたい」と話している。

 徳永 文稔ふみのり ・大阪市立大教授(分子病態学)の話「原因物質を除去する抗体を細胞内で作るという斬新なアイデアで、将来性も期待できる。ただ、抗体による副作用も考えられ、慎重に検証していくべきだ」