2018/06/22 10:00
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 鳥に食べられたナナフシの卵が生存状態で排せつされ、生息域を広げている可能性があると、神戸大の末次健司特命講師(30)らの研究グループが発表した。鳥に捕食された昆虫は、卵も含めて死に至るという常識を覆す発見で、米科学誌「エコロジー」電子版に掲載された。(篠原拓真)

 研究チームは、鳥に食べられた果実の種がふんとともに未消化のまま排出され、植物が分布域を拡大させていることに注目。同様に消化されずに排せつされる昆虫の卵もあるのではないかとの仮説を立てた。

 仮説を実証するため、卵の殻が頑丈▽ふ化した幼虫が自力でえさ場にたどり着ける▽雌単体で繁殖できる▽飛べない(移動能力が低い)−の4条件に合うナナフシで実験した。

 ナナフシモドキなど、3種類のナナフシの卵計170個を3羽のヒヨドリに食べさせたところ、21個が無傷で排せつされ、うち2個がふ化したことを確認。末次特命講師によると、ガの仲間も卵の殻が固いため、同様のことが起きる可能性が考えられるという。

 ナナフシはほとんどの種類に羽がないが、日本でも島しょ部などで生息が確認されている。末次特命講師は「ナナフシは積極的に食べられようとはしていないが、鳥の捕食が分布拡大の要因ということは十分あり得る」と説明。今後は共通の遺伝子を持ったナナフシの存在が、鳥の移動ルートと一致しているかなどを調べる。

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ふ化したナナフシモドキ(末次特命講師提供)
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ヒヨドリのふんから回収した卵(末次特命講師提供)
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神戸大の末次健司特命講師