https://mainichi.jp/articles/20180630/k00/00m/020/161000c

TPP11
年明けにも発効 日本、米包囲狙う
毎日新聞 2018年6月29日 23時08分(最終更新 6月30日 00時35分)

 米国を除く11カ国が署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の関連法が29日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。主な国内手続きを完了したのは、メキシコに次いで2番目。協定は早ければ年明けにも発効する。日本には多国間の自由貿易圏を広げ、保護主義を強めるトランプ米政権をけん制する狙いがあり、TPPへの新規加盟国の受け入れ手続きを進める考えだ。

 TPPを担当する茂木敏充経済再生担当相は閣議後会見で「日本の国内手続き終了が他国にも良い影響を与えることを期待する。早期発効への機運を高めたい」と述べた。
 TPPは加盟11カ国のうち、6カ国以上が国内手続きを終えれば60日後に発効する。域内関税の引き下げ、貿易や投資の促進により、政府は国内総生産(GDP)が年約8兆円押し上げられ、雇用は約46万人増加すると見込む。

 一方、巨額な貿易赤字を抱えるトランプ政権は、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動するなど保護主義的な政策を次々打ち出し、2国間協議で有利な条件を引き出して貿易問題を解決しようとしている。7月にも予定される新しい日米貿易協議でも、日本は農業や自動車分野の市場開放などを突きつけられる恐れがある。

 TPP発効による関税引き下げなどで加盟各国が対日輸出増を狙う中、競合する米国の農業団体などからはトランプ政権にTPP復帰を求める声も出ている。日本はTPP発効と加盟国拡大、さらに欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効も急ぐことで、トランプ政権に翻意を促したい考えだ。関係者は「自由貿易圏に包囲されるほど米国は焦る。それが狙いだ」と語る。

 TPPにはタイやコロンビアなどが関心を示している。日本は7月にも東京で事務方トップの首席交渉官会合を開き、新参加国の加盟手続きなどを議論したい考えだ。政府関係者は「加盟手続きを具体化すれば、TPPへの他国の関心をさらに高めることになる」と語る。【安藤大介】