https://lpt.c.yimg.jp/amd/20180630-00000040-mai-000-view.jpg

 ◇熊本の宇土半島 封じ込め成功、根絶目標を21年3月に

 熊本県の宇土半島で一時6000匹を超えるほど繁殖し、果樹被害などをもたらしてきた特定外来生物のタイワンリス(別名クリハラリス)が昨年、推定65匹にまで減ったことが駆除を進める地元の連絡協議会の調査で分かった。半島への封じ込めが成功した形で、協議会は「めどが立った」として根絶目標を2021年3月に定めた。専門家は「数千匹を超える外来リスの繁殖群を根絶した例は世界的にもなく、貴重な実践だ」と評価する。

 東南アジア原産のタイワンリスは体長約20センチ(尾まで入れると約40センチ)。繁殖力や環境適応力が強く、生態系に大きな被害を及ぼす恐れがあるため05年に特定外来生物に指定された。民間施設などから逃げて野生化した群れが14都府県で確認されており、九州では宇土半島のほか、長崎県の壱岐島と福江島、大分県の高島の3離島に生息している。

 宇土半島では1993年ごろ私設動物園で飼育が始まり、04年ごろから栽培が盛んなミカン類や柿などの果実・樹木被害が報告されるようになった。10年には推定生息数が6000匹を超えたことから、環境省▽林野庁▽県▽宇土、宇城両市▽JA▽学識経験者−−などで協議会を設置した。

 協議会は目標を「半島への封じ込め」と「半島からの根絶」の2段階に設定。好物のミカンに似せた疑似餌とクリの実を組み合わせた誘引餌を多数仕掛け、クリの実が食べられていた場所にカメラを設置して生息域を確認し分布域の東端を把握。生息域が東に延びる兆しが見えたら、その一帯に集中してわなを仕掛けることで、宇土半島から東に生息域が広がることを防いだ。

 また、1匹800円の報奨金制度を設け、民間の猟友会員や農家による集中的な捕獲を促し、初年度の10年度には推定生息数の半数に当たる3112匹の捕獲に成功。その後も宇城、宇土市が捕獲専門員を雇用。推定生息数が1000匹を切った4年目には、効果が上がらなくなった報奨金制度を廃止して両市による捕獲専門員6人の専従態勢に移行して捕獲を進めた。

 そうした結果、昨年度の推定生息数は65匹にまで減少。生息域も宇城市の三角岳周辺に狭まっており、協議会は20年度までに根絶が可能と判断した。年間捕獲数が0となった後も数年間はモニタリングを続ける。

6/30(土) 15:18
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180630-00000040-mai-soci

 森林総合研究所九州支所の安田雅俊・森林動物研究グループ長は「報奨金で生息数が減ってきたところで捕獲専門員を雇用するなど、効果が上がる方法を組織的に続けたことが奏功した」と分析。石井信夫・東京女子大教授(哺乳類生態学)は「九州全域への被害拡大を防いだ意義は計り知れない。しっかりと根絶を達成してほしい」と期待を込めた。【福岡賢正】