2018年7月23日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180723-OYTET50059/

 教師らの目が届きにくくなる夏休みを迎え、子供たちの自殺を防ぐ取り組みが各地で行われている。鹿児島県と熊本市は初めてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用した相談を実施。福岡県は今年度から、子供が自ら助けを求める「SOSの出し方教育」に関する授業を導入して命を救う活動を展開している。

■ 18歳以下の自殺者、夏休み明け前後に集中

 内閣府が1972〜2013年の18歳以下の自殺者を分析した15年版「自殺対策白書」によると、自殺は夏休み明け前後に集中し、中でも新学期が始まる9月1日は、この期間の累計で131人と最多だった。

 そんな中で、子供たちを救う手立てとして注目を集めているのが多くが利用しているSNSの活用だ。

 今年度から長期の休みに合わせてLINE(ライン)での相談を始めた鹿児島県。今夏は、夏休み前の18日から9月11日まで、希望する公立中高生を対象に実施する。運用は民間業者に依頼しており、自殺に関する相談を受けた経験のある社会福祉士などの専門相談員が対応する。

 同じくLINEでの相談を初めて導入する熊本市の受付期間は、8月24日から9月6日で夏休み明け前後に設定した。

 LINEによる相談は、長野県が昨年9月に2週間、中高生を対象に試行し、相談件数は前年度に電話で受けた2倍以上の約550件に達した。今年は7月1〜29日、8月18日〜9月17日の予定で行う。県の担当者は「表情が見えず、声色も分からないため、慎重に時間をかけてやりとりするよう心がけている」と話す。

 夏休み中は民間団体も、相談時間を延ばしたり、悩みを抱える子供を直接受け入れたりしている。

 18歳以下を対象にスマホなどのチャットによる無料相談を週1、2回行っているNPO法人「チャイルドライン支援センター」(東京)は、8月29日〜9月4日は、毎日相談に乗る。

 長崎市内のフリースクール「クレイン・ハーバー」は、ホームページなどで、つらい時は同市赤迫1の事務所に訪ねてくるよう呼びかける。

■ 思春期を迎え、親や教師に相談しにくい子供も…

 「信頼できる人は近くにいるよ」。福岡市東区の福岡県立香椎高の体育館で5月、県警の福岡少年サポートセンターで少年育成指導官を務める上野敬子さん(37)が全校生徒約1080人に語りかけた。授業は文部科学省が今年1月に全国の教育委員会に実施を求めたSOSの出し方教育。上野さんは、他人への暴力や自傷行為の背景には、「寂しさや怒り」といった自身の心の問題があると指摘し、「自分の気持ちに向き合い、身近な人に相談することが大切」と呼びかけた。

 自殺総合対策推進センター(東京)の本橋豊センター長は「思春期を迎え、親や教師に相談しにくいと感じる子供もいる。信頼できる相談相手が身近にいることを教え、子供からのSOSをすくい上げる態勢が必要」と話している。

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【SOSの出し方教育】  昨年改定された国の自殺総合対策大綱に、子供が様々な困難やストレスについて周囲の大人に相談するなどの対処法を身につけるための教育として盛り込まれた。東京都足立区は2009年から実施しており、区内の小中高校に保健師を派遣している。

■ 子供の自殺、増加

 国の統計によると、昨年の自殺者数は2万1321人。8年連続で減少したが、19歳以下は前年より47人多い567人。うち中高生は38人増の346人だった。自殺の理由は学業不振や友人関係、いじめなどの学校問題が多く、うつ病などの健康問題、家族からの 叱責しっせき といった家族問題が続く。

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