https://www.bbc.com/japanese/45042010

デング熱の感染予防、蚊を使って成功 豪研究
2018/08/02 9時間前

デング熱を引き起こすウイルスへの感染予防に、人工的に増やした蚊を活用することに成功したと、オーストラリアの研究者たちがこのほど発表した。

モナシュ大学の研究者たちは、自然界に存在するバクテリア「ボルバキア」が付いた蚊を人工的に増やし、北東部クイーンズランド州のタウンズビル市で放った。

放たれた蚊たちが通常の蚊と交配することで、ボルバキアが付いた蚊が増えていく。ボルバキアには、デングウイルスへの感染リスクを低下させる効果がある。
タウンズビル市では2014年以来、デングウイルスへの感染例が一つも報告されていない。

研究者らは、蚊が媒介になる病気のジカ熱やマラリアについても、同様の方法で感染拡大を防げると考えている。
ジカ熱やデング熱の感染予防に取り組むモナシュ大学ワールド・モスキート・プログラムのディレクター、スコット・オニール教授は英紙ガーディアンの取材に対し、「従来の方法はどれも感染を減らすことができなかった。状況はさらに悪化していた」とした上で、「我々はかなり効果があるものを見つけたと思う。今回の研究で、非常に期待が持てる手法だということが初めて示された」と述べた。

研究者たちは、モンスーンの季節4回にわたり、人口18万7000人を擁するタウンズビルの66キロ平方キロに及ぶ地域で、ボルバキアを持つ蚊を放った。
地域の住民も実験に協力した。地元の学校の生徒たちも、人工的に増やされた蚊を外に放つのを手伝った。
研究論文のウェブサイト、ゲイツ・オープン・リサーチで公開された実験結果について研究者たちは、都市全体で試みが成功したのは初めてだと述べている。

オニール教授は、「タウンズビルでの試みは、1人当たりの費用がおよそ15豪ドル(約1240円)で、蚊が媒介になる病気から地域社会を守り続けるために、すぐに展開でき、効率が良く、費用対効果の大きい手法を示した」と語った。
ワールド・モスキート・プログラムは、同様の試みを現在11カ国で進めており、今後はより貧しい地域でより広範囲に展開することを目指している。1人当たりの費用もわずか1米ドル(約112円)まで引き下げたい考えだ。

人口39万近くのインドネシア・ジョグジャカルタで現在行われているランダム化比較試験(RCT)の結果をまとめるのが、研究者たちの目下の目標だ。
(英語記事 Dengue fever outbreak stopped by special mosquitoes)