北海道中央部の地盤と今回の土砂崩れの仕組み
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荒井章司金沢大特任教授
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地震による土砂崩れで住宅がのみ込まれた現場。崩れた山肌の中で白くみえる部分が軽石を含んだ火山灰の層とみられる=6日、北海道厚真町で
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大雨の山沿い 警戒必要

 北海道を襲った地震は大規模な土砂崩れを引き起こした。こうした被害は北陸でも起こるのか。専門家は今回の地震を「過去の火山活動で降り積もった火山灰や軽石の地層が被害を広げた」と指摘。石川、富山両県内の活火山を踏まえた上で「大雨後、山沿いでは十分な注意が必要だが、あれほどの地滑りは考えにくい」との見方を示す。

 「現場の映像を見ると、崩れた土砂に白っぽい部分が確認できる。これが軽石」。金沢大の荒井章司特任教授(岩石学)は、震源に近い厚真(あつま)町で発生した土砂崩れを解説する。

 周辺の地盤は数百万年前の砂や泥が固まった堆積岩が基本。その上に、数万年前以降に降った火山灰や軽石などの火山噴出物が四〜五メートルほど積もっている。一番上の表面は土壌で三層の構造に。今回は一番下の堆積岩を除く上の二層が一気に崩落したとみられる。

 荒井氏は「軽石は穴だらけのスカスカで水を吸収しやすい。台風の後、たっぷりと水を含んだ軽石の地層が強く揺すぶられ、激しく滑った」と分析。軽石を含む火山灰の層が斜面をずり落ち、土壌を巻き込んで木々をなぎ倒し、多くの家屋を押しつぶしたとみる。

 地震の揺れで崩れやすい地形は国内各地の火山周辺にある。二〇一一年の東日本大震災では福島県白河市で粘土質の上に積もった火山灰の層が崩れ落ち、民家に流れ込んで多数の死者を出した。一六年の熊本地震でも阿蘇山の周辺で巨大な土砂崩れが起きた。

 ただ、荒井氏は火山灰の層に伴う土砂崩れが北陸で起きる可能性を否定。「地図を広げて分かる通り、北海道の活火山は枚挙にいとまがないが、北陸は違う。危険度は低い」とみる。根拠は立山や白山は過去の噴出物が少なく、その範囲は限られるためだ。

 今回は道内で過去最大の震度7を観測。北陸が同じ揺れに見舞われたら、どんな事態に陥るか。荒井氏は金沢平野の南東縁に発達する森本・富樫断層帯や、能登半島の基部に延びる邑知潟地溝帯にも触れて「軽石でなくても大量の水を含んだ砂は当然、滑りやすい。今回を教訓に災害から命を守る覚悟を新たにしてほしい」と警鐘を鳴らす。(前口憲幸)

中日新聞 2018年9月8日
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