https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180909/k10011619851000.html

ヨーロッパは長年、夏の生活時間を早めるサマータイム制度を実施していますが、健康に悪影響があるとして廃止を求める人が増えています。
EU=ヨーロッパ連合の執行機関にあたるヨーロッパ委員会は、近く、加盟国などに廃止を正式に提案する見通しで、今後の議論が注目されます。

EUは、すべての加盟国で3月から10月まで時計を1時間早めるサマータイム制度を実施しています。

しかし、EUがこの夏、1か月余りにわたって域内から意見を募集した結果、回答した460万人のうち84%がサマータイム制度の廃止を支持しました。

制度の廃止を求める人たちは、健康に悪影響がある、睡眠不足などによって交通事故が増加する、そして省エネ効果がないなどと主張しています。

ドイツ南西部、クリンゲンミュンスターの睡眠の専門医、ハンツ・ギュンター・ヴェース医師はNHKの取材に対し、「社会の時計を変えると体内時計と合わなくなり、
健康に悪影響がある」と指摘しています。
特に子どもや高齢者への影響は、40年近く前にサマータイム制度が始まった際に想定されていたよりも大きいと考えていて、
「サマータイムに切り替わった直後はうつの傾向が強まったり心筋梗塞の疑いで入院する人が増えたりする」としています。

一方、制度の継続を支持する人たちは、理由として、余暇を楽しむ時間が増えることをあげています。

ドイツの首都ベルリンの公務員、ウォルフガング・ニッケルさんはサマータイムの時期には週に3日ほど、仕事が終わったあとに
湖で趣味のボートをこぎ、仲間とビールを飲む時間を楽しんでいます。

ニッケルさんは「サマータイムは生活の質を高めている」と話しています。

EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会は、域内からの意見を受けて、近く加盟各国などに対しサマータイム制度の廃止を
正式に提案する見通しですが、加盟国の間で考え方に違いがあり、今後の議論が注目されます。

日本で求める声に専門家は懸念

2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策の一環として、夏の生活時間を早める「サマータイム」の導入を
求める声があがっていることに対し、専門家は、社会の隅々に普及したIT機器への影響について「動作確認などの作業が完了するまでに
少なくとも5年はかかる」と懸念を示しています。

情報システムに詳しい立命館大学の上原哲太郎教授は、システムの改修が不十分な状態でサマータイムを導入すると、
IT機器に混乱が生じる可能性を指摘しています。

例えば、4時間後に作動するようあるIT機器をセットし、時間が来る前にサマータイムに切り替わって時計が2時間早まった場合、
まだ2時間しかたっていないのに、コンピューターは4時間たったと判断して作動してしまうケースです。

サマータイムから元の時間に戻るときにはこれ逆のことが起こり、4時間後に作動するはずが6時間後に作動してしまうことが
考えられるということです。

今の社会では国や自治体、医療機関やインフラ、金融などのさまざまなシステムが時計に連動して動いているほか、家電など
インターネットにつながる機器も増え続けています。

夏時間が定着している国ではこれに対応したシステムが作られていますが、日本ではサマータイムを導入する前提で作られていないため、
あらゆるシステムを改修する必要があると上原教授は指摘しています。

そのうえで「全国の技術者が総動員で対応しても、動作確認などが完了するまでに少なくとも5年はかかり、2020年には間に合わない」
と懸念を示しています。
も含め、正直どんな影響がでるか想像もできない。1秒を挟み込む『うるう秒』ですらシステムに障害が出る中で、あと2年でサマータイムの
対策を講じなければならないというのは大変きびしい。トラブル回避や対策費などを考えるとサマータイムは導入しないのがいちばんだ」
と指摘しています。