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2018/09/10
スウェーデンで9日に行われた総選挙では、与党・社会民主労働党が率いる中道左派勢力と野党・穏健党が中心の中道右派連合の得票率が拮抗した一方、反移民を掲げるスウェーデン民主党(SD)が躍進した。

議会(定数349)選挙の開票がほぼ終わった段階で、社会民主労働党と緑の党、左翼党は合わせて40.6%の票を獲得。対する右派連合は40.3%だった。国民主義政党のSDは18%と、前回の12.9%から票を伸ばした。

今後、連立政権作りを目指す長い駆け引きが始まるのは必至だ。

スウェーデンの選挙は比例代表制を基にしており、得票率に応じて各政党に選挙区ごとに議席が割り当てられる。
中道両派は共にSDとの連立を拒否しているが、双方の党首は、他の少数政党全てと連立協議を行うと話している。
SDのイミー・オーケソン党首は選挙集会で、「我々は議席を増やし、向こう数週間、数カ月、数年間にスウェーデンで起こることに大きな影響を与えていく」と述べた。

ステファン・ロベーン首相率いる連立与党は、社会民主労働党と緑の党が参加し、議会では左翼党の支援を受けている。
一方、4党が集まった中道右派の連合は、穏健党のウルフ・クリステルソン党首を首相候補に掲げている。クリステルソン氏は、連立与党は自然の成り行きで支持を落としたとして、内閣は総辞職すべきだと主張している。

しかしロベーン首相は辞任するつもりはないと述べ、選挙集会では「議会の開会まで2週間ある。私は有権者とスウェーデンの選挙制度を尊重しながら、首相として落ち着いて業務に当たる」と話した。

SDや少数政党が議席を伸ばした一方、社会民主労働党と穏健党は共に得票率を下げている。しかし複数の支持率調査で、SDもまた勢力が衰えたことが示唆されている。

アナリストらは、中道右派連合の方が連立相手を見つけやすいが、複雑な交渉が必要だろうとみている。
今回の総選挙では移民政策が焦点となった。SDは移民受け入れを厳しく制限したい考えだが、ロベーン首相はこれを「人種差別だ」と説明していた。

スウェーデン民主党とは?

SDは長らくネオナチを含む複数の極右グループとかかわりを持っており、初議席を得たのは2010年だった。
最近ではイメージチェンジを図っており、たいまつだったロゴをスウェーデン国旗と同じ青と黄色のヒナギクに変えた。

SDは伝統的に労働者階級の男性へ支持を呼びかけていたが、女性や高所得層を取り込もうとしている。
オーケソン党首は党内での人種差別は許さないと述べ、複数の党員が追放された。
しかし、SDはなおさまざまな人種差別スキャンダルを抱えている。現地タブロイド紙によると、ある地方議員候補はフェイスブックで「スウェーデン人は白人で、スウェーデンは我々のもの」という歌をシェアしていた。

選挙の焦点は?

スウェーデン経済は好調だが、多くの有権者は2015年の移民危機によって住宅事情や医療、社会福祉サービスなどが脅かされていると懸念している。

スウェーデンは2015年、16万3000人の難民申請者を受け入れた。これは人口当たりの受け入れ人数としては欧州連合(EU)加盟国で最多だった。
移民が社会にとけ込めるのかという懸念の高まりを受けて、スウェーデンの伝統的な政党は移民受け入れについて態度を硬化させている。

多くの有権者は、暴力事件についても懸念している。公式の数字では因果関係が見られないものの、SDは移民増加と銃撃事件の増加を関連付けている。

SDはさらに、EUを離脱するための「スウェグジット」国民投票を求めている。しかし、議席の大半を占める中道政党は全てこの案に反対しており、実現する可能性は低い。
移民のほかには、多くのスウェーデン人が気候変動を問題として掲げている。今年は特に、長く暑い夏が続き、深刻な山火事も発生した。

この熱波で2万5000ヘクタールの森林が消失した。さまざまな内部スキャンダルで苦戦していた緑の党は、この件を経て徐々に支持を伸ばした。
(英語記事 Swedish deadlock as nationalists gain)