福岡市東区箱崎6丁目の九州大箱崎キャンパスで7日朝に研究室を焼いた火災で、福岡東署は15日、焼け跡から見つかった遺体は研究室に出入りしていた同区の職業不詳の男性(46)と発表した。署によると、死因はやけどによる火傷死。男性が放火、自殺したとみて調べている。

 署は、現住建造物放火か、非現住建造物放火の疑いで、男性を容疑者死亡のまま書類送検することも視野に入れている。

 男性は九大法学部の卒業生。署によると、研究室の内側からテープで目張りがされた上、遺体の近くに灯油用のポリタンクやライターがあった。自宅からは、9月上旬にポリタンクを購入した際のレシートも見つかったという。

 九大によると、男性は大学院に進学し、2010年の退学後も研究室を使用。大学院は、9月末に同市西区の伊都キャンパスへ移転を完了する予定で、男性に再三退去を求めていた。

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■困窮、研究の場も無く 「経済破綻に直面」知人に訴え 非常勤職失い複数のバイト

 福岡市東区の九州大学箱崎キャンパスの火災で亡くなった卒業生の男性(46)は、2010年の退学後も常勤の研究職を目指していたが、非常勤職を“雇い止め”に遭うなどして困窮を深めた。家賃の支払いも滞り、肉体労働を掛け持ちして研究室で寝泊まりするようになった。そこに学舎の移転が重なる。「耐乏生活を強いられる」「経済破綻に直面」−。男性は親交のあった大学関係者に宛てたメールで、苦しい胸の内を訴えていた。

 複数の関係者によると、男性は15歳で自衛官になったが退官し、九大法学部に入学。憲法を専攻し、1998年に大学院に進学した。修士課程を修了して博士課程に進んだが、博士論文を提出しないまま2010年に退学となった。

 ドイツ語を勉強し、文献の校正ができるほどの力を付けた。生前は少なくとも県内の二つの大学で非常勤講師を務める傍ら、教授の研究補助もしていた。元教授は「授業の発表も丁寧で、論文を書く能力もあったのに」と振り返る。

 大学側によると、男性は15年以降、研究室を1人で使用。ただ、顔を出すのは夜間で、ほかの院生と接触しない“孤立”状態だった。

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 そんな男性が、信頼した九大関係者に心の内をメールで明かしていた。

 月末払いの家賃を振り込もうとしましたが、金額が足りませんでした。経済破綻に直面しています(昨年6月1日)

 3、4月はほぼ無給だったことや、専門学校の非常勤職が“雇い止め”となり、5、6月の月収は14万5千円とつづった。

https://www.nishinippon.co.jp/sp/nnp/national/article/450029/