なぜ小売り系銀行が増えているのか
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 コンビニエンスストア大手ローソン子会社のローソン銀行が10月15日にサービスを始める。地方銀行からATM(現金自動預払機)を受託して手数料収入を伸ばし、将来的には現金を使わない「キャッシュレス決済」に商機を見いだす考えだが、長引く超低金利で銀行は利ざや(貸出金利と預金金利の差)を稼げず、「冬の時代」と揶揄される。しかも小売り系銀行としては最後発だ。果たして勝算は−。(林修太郎)

 「なぜ、ローソンがこのタイミングで銀行なのか、疑問を抱く人もいるでしょう」

 9月10日、ローソン銀が東京都内で開いた事業説明会。山下雅史社長は報道陣にこう語りかけた。

 平成13年に参入したアイワイバンク銀行(現セブン銀行)はコンビニ最大手のセブン−イレブンにATM網を張りめぐらせ、提携銀行からの手数料収入で稼いできた。19年にはイオン銀行が参入し住宅ローンなども手がける。日銀の金融緩和による超低金利にあえぐ銀行業への新規参入は23年に大和証券グループ本社が大和ネクスト銀行を開業して以来だ。ローソン銀は独自のビジネスモデルを確立できるかが勝負となる。

 ローソン銀の担当者は「利ざやで稼ぐわけではない」と説明し、超低金利を逆風とは考えていない。当面はセブン銀モデルを踏襲し、全国1万3000台のATMを活用する。ATMは1台当たり月数十万円とされる維持費がかかるため、一部の大手銀行や地銀は自前のATMを減らし、小売り系銀行に委託し始めた。山下氏も「既に何行か検討中」と打ち明ける。

 ただ、迎え撃つセブン銀のATMはローソン銀の2倍弱の2万4000台と差は大きい。しかも、現金の出し入れといったATMの基本サービスで差別化は難しく、ATMのみではセブン銀に太刀打ちできない。実際、セブン銀の担当者は「切磋琢磨し顧客サービスの向上につなげたい」と余裕の構えだ。

 ローソン銀が将来構想として掲げるのは、「キャッシュレス社会への挑戦」(ローソンの竹増貞信社長)。ローソン店舗を核に「安いコストで、利便性の高い決済を提供」(竹増氏)し、地域全体の顧客を囲い込む戦略だ。ローソン以外の店舗でも使えるスマートフォン決済などの仕組みを提携地銀と検討する。

 さらに、提携地銀がローソン店舗の一部を出張所として使い、会社員が来店しやすい夜間に資産運用などコンサルティング業務を手がけたり、金融商品を販売したりする案もある。また、ローソン店舗の買い物客が釣り銭を自動で預けられる「おつり預金」など構想は幅広い。ただ、具体策や導入のタイミングは示されておらず、現段階での成否は不透明だ。

 ローソン銀で預金口座を作ると、支店名は預金者の誕生月別に「おもち」(1月)、「パスタ」(9月)など、ローソンでなじみのある商品名が採用される。ローソン銀はローソンのように各地で親しまれる存在になれるか。小売り系銀行「戦国時代」の幕が上がる。

産経新聞 2018.9.17 22:12
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