法務省 日本語学校の設置基準を厳格化 就労助長防ぐ
毎日新聞2018年9月24日 00時00分(最終更新 9月24日 00時00分)
https://mainichi.jp/articles/20180924/k00/00m/040/118000c

10月から 「年間通じた授業開講の義務づけ」などが柱
 外国人留学生の増加とともに増えている「日本語学校」について、法務省は設置要件を定めた告示基準を来月から厳格化する。年間を通じた授業開講を義務づけることなどが柱。教育の質の低下を抑制する▽アルバイト目的などで長期間休めるような授業日程を組めないようにする−−などの目的がある。【和田武士】

 日本学生支援機構などによると、外国人留学生は昨年5月時点で、大学などの高等教育機関約18万8000人▽日本語学校約7万8000人−−で計約26万7000人。5年間で10万人以上増加し、日本語学校に限ると約3倍となる。日本語学校自体も増え続け、現在710校を数える。
 日本語学校は大学や専門学校などと違い、法務省が定める授業時間や教員数などの要件を満たせば、株式会社や個人などでも開設できる。現行の告示基準は授業時間について、1単位を「45分を下回らない」とした上で、1週間で20単位以上▽1年間で760単位以上−−などと規定している。
 しかし、一部の日本語学校では短期間で年間の授業時間を確保し、残りを長期休業期間にしようとする動きが顕在化。留学生の就労は原則として週28時間までと定められているが、長期休業中は1日8時間まで可能になるため、アルバイトに充てる時間をより多くできる。一部の日本語学校はこうした授業日程を強調し就労目的の留学生を呼び込もうとしたとみられる。
 そこで法務省は、告示基準を一部改正。年間の授業が35週にわたるよう義務づける規定を新設し、10月以降に開設される学校に適用する(既存の学校には2020年10月から適用)。また、管理体制強化のため、1人が複数の日本語学校の校長を兼務する場合、新設・既存ともに20年10月以降は副校長を置くことも義務づけた。同省の担当者は「日本語学習を目的とした本来の姿に戻したい」と話している。
 政府は建設や介護など人手不足が深刻な業種を想定し、外国人労働者の受け入れ拡大を図る法改正を検討している。これとは別に外国人留学生について、日本の4年制大学の卒業生▽「クールジャパン戦略」の関連分野(アニメや漫画、日本料理、ゲームなど)の専門学校の卒業生−−などが国内で就職しやすくなるよう在留資格の範囲を広げる方針。こうした中、今回の日本語学校の告示基準の改正は留学生全体の「質」を確保する狙いもあるとみられる。
「アルバイトで稼げる」などとアピールする学校も
 留学生の増加を背景に各地で増え続けている日本語学校。法務省関係者によると、就労目的の留学生を念頭に「アルバイトで稼げる」などとアピールする学校も存在する。中には、留学生に法定時間を超える不法就労をさせたとして、日本語学校運営者が警察に逮捕される事件も起きている。
 栃木県足利市の日本語学校理事長で、群馬県館林市の人材派遣会社社長は2016年11月、入管法違反(不法就労助長)容疑で栃木・群馬両県警に逮捕された。ベトナム人留学生2人を倉庫に作業員として派遣し、法定上限の週28時間を超えて就労させたとされ、2人も同法違反(資格外活動)容疑で逮捕された。
 17年5月には、京都市の日本語学校に通っていたスリランカ人留学生2人に週28時間を超えて違法に長時間労働をさせたとして、学校を運営する建物管理会社の代表取締役ら2人が京都府警に入管法違反(不法就労助長)容疑で逮捕された。
 一方、留学生の不法残留者数をみると、15年から増加傾向にあり、今年1月1日時点で4100人。国籍・地域別ではベトナムが急増しているという。また、新たに不法残留となった留学生を所属している教育機関別にみると、日本語学校が最多の51%(16年)だった。