さいたま市が本人確認を怠ったことにより無断で印鑑登録を変更され、所有する土地の売買を取り消すための訴訟費用がかかったなどとして、同市緑区の女性(80)が市を相手取り、弁護士費用など約1300万円の支払いを求めた訴訟の判決が28日、さいたま地裁であった。斎藤清文裁判長は「市職員は職務上の注意義務を尽くしたとはいえず、本人と判断して印鑑登録した手続きは違法」として、約715万円の支払いを命じた。女性が精神的苦痛を受けたとする慰謝料の請求については、「財産的損害が回復される」などとして棄却した。

 判決理由で斎藤裁判長は、女性に成り済ました他人が申請書に記載した住所と運転免許証の住所が異なっていたほか、運転免許証の偽造を検知する装置で不可判定が出たことから、「市の担当職員は申請者が本人であるかや、免許証が偽造された可能性を疑うことができた」と指摘。生年月日や干支(えと)などを質問することによって、「本人でないと判明した可能性が高い」とした。

 判決によると、さいたま市は2015年10月、女性に成り済ました者が申請した印鑑登録を変更。その者は証明書を利用し、女性が所有する東京都世田谷区の土地の売買契約をした。女性は訴訟を起こして勝訴し土地の登記は抹消されたが、弁護士費用など約986万円を支払った。

 さいたま市の清水勇人市長は「判決内容を精査し、適切に対処する」とコメントした。

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