https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45742607

きょうだいと法的なパートナー関係になりたい……法律の落とし穴と不平等
2018/10/04 3時間前

テリーザ・メイ英首相は2日、同性カップルだけでなく、異性カップルにも、結婚しなくても配偶者としての法的権利を認めるシビル・パートナーシップを選択できるようにすると発表した。これは結婚という形を選ばない多くの同性カップルに歓迎されている。それに加えて英国では、兄弟姉妹にもこのシビル・パートナーシップを認めてほしいという声が上がっている。フランチェスカ・ジレット記者が報告する。

キャサリン・アトリーさんは30年以上、姉のバージニア(ジンダ)さんと暮らしてきた。
2人は一緒にキャサリンさんの娘を育て、ロンドン南部に家を共同所有している。

キャサリンさんとジンダさんは、生活や財産を共にするパートナー関係にあると法的に認められる「シビル・パートナーシップ」制度が、きょうだいにも適用されるよう望んでいる。英国には、同じように希望するきょうだいが沢山いる。

与党・保守党の下院議員サー・エドワード・リーが2日、ツイッターにこの提案を書き込んだところ、近親相姦を支持するのかと非難され、「馬鹿げている」と笑われてしまった。

しかし、シビル・パートナーシップのきょうだいへの適用は、活動家が長い間訴えてきているものだ。

英国では、死亡時に全ての財産を配偶者あるいはシビル・パートナーシップの相手に譲渡する場合、相続税がかからない。しかし、きょうだいの間では相続税がかかる。

「中身のある反論は出ていない」とキャサリンさんは言う。
「みんな誤解している」

59歳のキャサリンさんと64歳のジンダさんは1985年に初めて共同でマンションを買って以来、社会人生活のほとんどを2人で過ごしてきた。

キャサリンさんによると、1993年に娘を授かった際には、ジンダさんが支えてくれたという。

「私は計画していない妊娠をして、子供の父親とは暮らせなかった。完全な悪夢になるところだった」
「大好きな姉は直ちに、私たちを支えてくれた。男きょうだい2人が住む近くに2人で家を買った。ただただ、素晴らしかった」
「姉が私の拠りどころだった」

キャサリンさんは、成人してから一緒に暮らすきょうだいには「特別な絆」があると話した。
「姉は私の分身で、私の親友。生まれたときから彼女を知っている。きょうだいと仲良くない人もいるけれど、とても強い関係を築くこともできる」

キャサリンさんの娘、「リビー」ことオリビアさん(24)は、「親が2人いるのと、まったく変わらない」と話した。

「母と伯母、どちらも私の親だと感じている。とても幸せで安定した家庭でした。まわりの人はみんな、『リビーにはお母さんが2人いる』と思っていた。ただそれだけのことです」
キャサリンさんとジンダさんはシビル・パートナーシップを結ぶことで、法的な関係となったカップルと同様の相続権を獲得したいと考えている。

「私か姉のどちらかが先に死んだら、相続税を払うために家を売らなければならない」と、キャサリンさんは説明する。
シビル・パートナーシップ関係には2人の人間同士、どのような関係でも入ることができる。恋愛関係にはある必要はないが、血縁関係の2人にのみ認められない。
これは「はなはだしい不平等だ」とキャサリンさんは訴えている。

「きょうだいを制度から除外するのは純粋な差別だ。隣に住んでいる人とならシビル・パートナーシップを結べるのに、一緒に住んで人生を共にしている姉とは結べない」
「シビル・パートナーシップだけがこの不平等を解決する方法だとは言わないが、これが一番分かりやすい方法。この決まりを変えれば、相続税の対策にもなる」

キャサリンさんとジンダさんは17万5000ポンド(約2600万円)で家を購入したが、住宅価格の高騰で資産価値は上がっている。
相続税法によると、一定額以上の不動産への課税率は40%だ。

キャサリンさん(左)とジンダさんは姉妹だ
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キャサリンさん(中央)と姉のジンダさん(右)、娘のオリビアさん
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幼少時代のジンダさん(右)とキャサリンさん
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