松本大教育学部(松本市)の守一雄教授(認知心理学)らの研究グループが、事件などの目撃者同士が会話する中で記憶が変容していくことが、文化や国を超えた現象であると確認した。ブラジルやトルコ、インドなど10カ国の研究者と共にまとめた論文が、認知と記憶に関する国際学術誌に近く掲載される。

 記憶の変容を示す実験は2人一組で、それぞれが偏光眼鏡をかけて6分余の映像を見る。偏光眼鏡を通すと、同じ映像でもマグカップの色などが異なって見える。見た後に映像の内容について答えてもらう。相談せずに回答した場合の正答率は国ごとに54〜74%だったが、相談した場合は7〜35%と低くなった。

 目撃情報の記憶が相談相手に同調して変わるためとみられている。守教授は「人間の記憶はあいまいで、書き換えているのが実情」と説明。裁判での供述や証言などの扱いについて、科学的な研究に基づいた検討が必要と指摘している。

 守教授は2008年にニュージーランドの研究者と共同で実験を行い、記憶の同調を確認。さらに異なる国でも同様の現象が見られるかを調べるため、各国の研究者に協力を呼び掛けた。心理学分野は研究や論文が欧米に偏っているとして、非欧米諸国の研究者や被験者と連携し、15〜16年に実験をした。成果を今年6月にカナダで開かれた学会で発表した。

 研究を評価した学術誌側から9月に掲載決定の通知が届いた。守教授は「非英語圏など多様な国が参加した。論文掲載は大きな成果だ」と話している。これらを踏まえ、13日午後2時から松本大で、ポルトガル、コロンビア、マレーシア、ニュージーランドの研究者を招いた国際シンポジウムを開く。関心がある人は参加できる。発表は英語。

(10月12日)
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