防衛省は羽根付きの弾頭を滑空させて目標を狙う新型ミサイル「高速滑空弾」を装備化する方針を固めた。開発を2段階に分けて進め、2026年度の装備化を目指す。同省関係者によると、陸上自衛隊による運用を想定。「離島防衛用」と位置づけて射程を300〜500キロ程度にする見込みだが、自衛隊の装備の長射程化が進むことになり、専守防衛との整合性を問う声が上がる可能性もある。

 高速滑空弾はロケットで地上から打ち上げた後、分離した弾頭が大気圏の上層をグライダーのように超音速で滑空し、全地球測位システム(GPS)などで目標を狙う誘導弾だ。高速による複雑な軌道の飛行が可能で、迎撃が困難とされる。米国やロシア、中国なども、滑空性能がある高速ミサイルの開発を進めている。

 防衛省は今年度予算で、滑空弾の技術研究として46億円を計上し、早期装備化に向け来年度予算の概算要求で138億円を追加した。開発を2段階に分け、まずは円筒形で周囲に複数の羽根が付いた滑空性の低い弾頭の試験を25年度までに終え、翌年度にも装備化する。さらに、滑空性の高い爪のような平らな形状の弾頭開発も進め、実用化に成功すれば28年度以降の装備化を目指すという。

 高速滑空弾の使用は、南西諸島に侵攻があった場合の使用を想定している。離島奪回に向けた上陸作戦の前に、遠距離から敵の拠点などを攻撃しておく必要があるが、陸自のミサイルの射程は最新の12式地対艦誘導弾でも百数十キロ程度。沖縄本島と尖閣諸島の間は約420キロ、宮古島との間でも約290キロあり、戦闘機や護衛艦からの支援が十分受けられない場合に備えた長射程の地対地ミサイルの開発が課題だった。

 自衛隊では戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイルの取得など、装備の長射程化が進む。滑空弾についても、防衛省幹部は「ロケット部分の能力を上げれば射程を長くすることが可能」と話しており、「敵基地攻撃能力」への転用を懸念する声も出そうだ。【前谷宏】

10/15(月) 10:58配信 毎日新聞
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防衛省が装備化を目指す高速滑空弾の運用イメージ
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