https://mainichi.jp/articles/20181025/k00/00m/040/096000c

 河野太郎外相は24日、内戦下のシリアで2015年6月に行方不明になったフリージャーナリストの安田純平さん(44)について「無事を確認した」と発表した。安田さんは反体制派の武装勢力に拘束されたとみられていた。健康状態は良好だという。外務省は安田さんの早期帰国を支援するため、旅券業務などを担う領事局の幹部を現地に派遣した。

「シリアで40カ月拘束」

 在トルコ日本大使館員が24日、トルコ南部アンタキヤの入管施設を訪れ、保護された男性を安田さんだと確認した。

 アンタキヤがあるハタイ県の当局は24日、安田さんの映像と写真を公開した。入管施設で同日午前11時20分に撮影したもので、安田さんは英語で「シリアに40カ月拘束されていた」「今はトルコにいて安全です。ありがとう」と語った。

 安田さんの無事が確認されたことを受け、安倍晋三首相はカタールのタミム首長、トルコのエルドアン大統領にそれぞれ電話で謝意を伝えた。エルドアン氏は「早期に帰国できるよう引き続き支援したい」と応じた。その後、首相は「安田さんは大使館員に元気に話をしていると報告を受けている。準備が整い次第、帰国できるように対応していきたい」と記者団に語った。

 安田さんの帰国について河野氏は「医務官が最終的に健康状況をみた上で、なるべく早い方法で日本に帰国していただく」と記者団に語った。安田さんは旅券や身分証明書を持っていないといい、政府が支援する。政府高官は24日夜、「順調にいけば帰国までそんなに時間はかからない」と語った。

 菅義偉官房長官は24日の記者会見で、武装勢力との交渉について「直接ではない」と説明。「カタール、トルコをはじめ関係国に協力を依頼し、さまざまな情報網を駆使して全力で対応を進めてきた」と述べた。

 菅氏は政府として身代金は支払っていないと明言。在英の民間組織・シリア人権観測所が「カタールが身代金を支払った」との見方を示したことに関しても「そうしたことはまったくない」と否定した。

 安田さんは15年6月下旬、シリアとトルコの国境地帯にある難民キャンプを取材するため、トルコからシリア北西部イドリブ県へ密入国したとされる。拘束時の詳細な状況は不明。これまでに安田さんとみられる男性の動画や静止画がインターネット上に複数回公開されていた。【光田宗義、アンタキヤ(トルコ南部)高橋宗男】