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「ギガが減る」「写真を盛る」「推しメン」など、SNSでよく見るさまざまな言葉を載せた辞書が登場した。「三省堂 現代新国語辞典 第6版」(以下、現代新国語辞典)だ。発売後、「こんな辞書があるとは」「時代の流れを感じる」などとインターネット上で話題を集めている。

【画像】「今年の新語」に選ばれても、辞書に入るとは限らない

 SNSと切っても切れない関係にある「ハッシュタグ」や「エゴサーチ(エゴサ)」もあれば、スマホでよく使う「スクリーンショット(スクショ)」、「orz」や「草(www)」のようなネットスラングもある。

 もちろんくだけた言葉だけではなく「フェイクニュース」や「キュレーション」など、時事性の高い語も多数収録されている。「暗号通貨」「シンギュラリティ」「IoT」といったIT用語も満載だ。

 しかし、現代新国語辞典がもともと新語やネットスラングに強い辞書だったのかといえばそうではない。むしろ「第5版までは俗語の収録には抑制的だった」と三省堂の木村晃治さん(国語辞書出版部)は言う。

 現代新国語辞典のメインターゲットは高校生。これまで力を入れて収録してきたのは、一般的な辞書では対応しきれない教科書用語や評論用語だった。

 ではなぜ、第6版から突然新語やネットスラングも多数収録するようになったのか。木村さんは「高校生が『こんな身近な言葉も載っているのか!』と思うような語を入れることで、辞書に対して親近感を持ってもらえたらと考えた」と話す。

 評論用語のような“お堅い”言葉だけでなく、高校生にも身近な言葉を入れることで「退屈そう」という辞書のイメージを取り払い、若者の辞書離れを防ぐ狙いがあったという。

 また、新語の収録はSNSの利用層や社会的な影響力の拡大も鑑みた結果でもある。木村さんをはじめとした編集担当者は、本や新聞、雑誌、テレビなどあらゆるところから収録語の候補となる言葉を集めているが「極力新しいものまで候補にできるよう、SNSは毎日チェックしている」(木村さん)という。

 集めた言葉は編集委員と選定。「老若男女を問わず広く使われているか」「俗っぽすぎないか」「寿命が短くはないか」などさまざまな観点から検討を重ね、収録する語や語義を選出した。ふるい落とされた言葉の中には、ニュースでも目にする「爆買い」や三省堂の「今年の新語 2016」に入った「エモい」などもあったという。

 「爆買い」が選考からもれた理由について、木村さんは「この言葉が下火になったという面もある。新語の寿命は推定するのが難しい」と振り返る。そうした課題がある中で、現代新国語辞典が手厚く新語を収録できたのには、高校生向け辞書ならではの理由もあった。改訂頻度が他の辞書と比べて高いのだ。

 「一般的な辞書の改訂には7、8年ほどかかりますが、現代新国語辞典は教科書の改訂に合わせて4年ごとに改訂しています。短い分、新語も入れやすい」(木村さん)

 一方で木村さんは「都合の良いことを言ってしまうと『この語は寿命が短いな』と思ったら次の版で消すこともできなくはない」と明かした。第6版に追加された新語は、4年後にどうなっているだろうか。

10/29(月) 10:25
ITmedia NEWS
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