https://www.sankei.com/images/news/181122/wor1811220025-p1.jpg
シュライバー米国防次官補(東アジア太平洋担当)

 【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省でアジア太平洋の安全保障を担当するシュライバー次官補は21日、産経新聞の単独会見に応じた。シュライバー氏は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で活動を活発化させている中国海警局の公船や中国軍系民兵が乗り組んだ漁船に関し、「中国の領有権を主張して日本を圧迫する目的で活動しているのであれば、中国海軍の艦船と区別しない」と述べ、厳然と対処していく姿勢を強調した。

 シュライバー氏は、「尖閣諸島は日本の施政権下にあり、日米安全保障条約(第5条に基づく米国の対日防衛義務)の適用対象であり、米国は同盟国として日本を支えていく」と言明した上で、「中国船の船体の色(が海軍の灰色か海警局の白色か)よりも、これらの船の任務や目的が何かに関して最大の懸念を抱いている」と指摘した。

 また、中国船が「自由で開かれたインド太平洋」の原則や日本の施政権を脅かす行動をとった場合は「適切に対処する」と警告した。米国として一連の立場を「中国に直接伝えた」とも明らかにした。

 同氏は、東シナ海をめぐる中国の行動は「日本にとり最重要に近い懸案だ」と指摘し、日本による尖閣防衛に向けた取り組み強化を支援していく姿勢を強調。日本が年末に策定する2019年度から5カ年の中期防衛力整備計画(中期防)の内容を「注視している」とも語った。

 さらに「日本はアジア太平洋地域で最も重要な同盟国だ」と指摘。沖縄の米軍基地は「米国がアジア全域で懸案を抱える中、米軍の前進配備と現地での訓練・演習を可能にしている点で決定的に重要だ」と訴えた。

 北朝鮮問題に関しては、「交渉は外交官に任せる」として国務省主導の非核化協議を支援する立場を打ち出す一方、「北朝鮮との間では幾つかの信頼醸成措置が取られたものの、北朝鮮は通常兵力を全く削減していない」と指摘し、「北朝鮮は引き続き重大な脅威だ」と訴え、米韓同盟に基づく米軍駐留の必要性を強調。在韓米軍の削減をめぐる議論は「現時点で一切行われていない」とした。

 非核化協議を進展させる狙いから中止されている米韓の大規模合同演習を来年春以降に再開するかについては「北朝鮮の交渉態度が誠実かどうか次第だ」と指摘。これに関し国防総省は21日、今後の演習に関し、規模を縮小して実施するなどの選択肢を検討しているとする声明を発表した。



 ランドール・シュライバー米国防次官補 西部オレゴン州出身。海軍情報士官として湾岸戦争(1991年)などに参加後、ハーバード大で修士号(公共政策)取得。ブッシュ(子)政権下の2003〜05年に国務次官補代理(東アジア・太平洋問題担当)を務めるなどした後、コンサルタント会社「アーミテージ・インターナショナル」をリチャード・アーミテージ元国務副長官らと共同設立した。アジア地域を専門とする政策研究機関「プロジェクト2049研究所」の代表も務めた。18年1月から現職。 

産経新聞 2018.11.22 13:21
https://www.sankei.com/smp/world/news/181122/wor1811220025-s1.html