外国人労働者の受け入れを大幅に拡大する改正入管難民法が成立した。だが、学校現場では既に、日本語が十分に話せない児童や保護者への対応が限界に近づいている。兵庫県内の公立学校で学ぶ日本語指導が必要な生徒は本年度1300人を超え、過去最多に。多国籍化も進み、人材不足が深刻化する中、支援の量や質に差が生じている。(広畑千春)

 就労者が家族を呼び寄せる形でシリア人児童が急増している三木市。ある市立小学校に通う児童の母親は、日本語をほとんど理解できない。児童は県教育委員会と市教育委員会から、児童の母語に対応する「子ども多文化共生サポーター」の派遣を受けていたが、来日から2年が過ぎ、その期間も切れた。担任は小まめに家庭訪問をしたり、プリントの漢字に振り仮名を付けたりしてコミュニケーションを取ろうとしている。校長は「教員の長時間勤務是正も指摘され、今のままの体制ではとても持たない」と先行きを不安視する。

 夜間中学でも多国籍化が進む。神戸市立兵庫中学校北分校(同市兵庫区)は全校生19人のうち、外国籍は7カ国14人。1校時が始まる前の0校時には、日本語の授業を設ける。多文化共生サポーターら母語が分かる支援員を計5人配置するが、毎日は難しく、電子辞書を併用したり、英語が話せる教員が寄り添ったりして授業を進める。有井晃一校長は「文化も日本語力も大きく違う。教員も日本語の指導方法の研修が必要ではないか」と訴える。

 県教委によると、県内の公立学校で学ぶ児童生徒のうち日本語指導が必要なのは、外国籍と、国際結婚などで日本国籍を持つ子どもを合わせ、本年度は1307人。都市部だけでなく、大規模な工場がある郊外でも目立つ。母語も多様化し、本年度は中国語やベトナム語など以外に、パシュトゥー語(アフガニスタンなど)やウイグル語など36言語と、この10年で2倍以上に増えた。

 こうした中、県教委は地元自治体と役割を分担しようと、2年間だった多文化共生サポーターの派遣期間を、昨年度から1年間に短縮した。残りは市町教育委員会が対応するが、財政状況に加え、遠隔地で人材の確保自体が困難な場合も少なくなく、時間や回数に差があるのが現状だ。

 その多文化共生サポーターのなり手不足は、さらに深刻化している。県教委は本年度、ポルトガル語やベトナム語の依頼が急増したため、5、6回の追加募集をかけて何とか必要な人数を確保した。少数言語の場合は大学の留学生や児童生徒の親族、知人らに相談しているが、難航することも多いという。

 一方で、外国籍の子どもの高校進学率は日本人に比べて低く、貧困の連鎖も懸念される。神戸大国際人間科学部の落合知子准教授(異文化間教育学)は「もともと外国人が多い都市部に比べ、地方ではNPOや自助組織も少なく、学校任せには限界がある」と指摘。「多様な言語や文化を持つ子どもと共に学ぶこと自体が、大きな教育資源。言語とアイデンティティー両面で、子どもの将来を見据えた支援が不可欠だ」としている。

国語の授業で漢字の読み仮名を練習する生徒。プリントには中国語も添えてある=神戸市立兵庫中学校北分校
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2018/12/23 13:56神戸新聞NEXT
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