音もなく扉が開くと、刑務官と共に痩せぎすな男が姿を現した。
昨年、日本中を震撼させた白石隆浩(28)である。わずか2カ月の間に十代の少女4人を含む9人を自宅で殺害。
すべての遺体を自ら解体するなど猟奇ぶりも際立っていた。逮捕から1年余り、男に反省の色は一切ない。

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アクリル板越しに記者を認めた白石は、背筋をぴんと伸ばし、両足の踵をそろえたまま深々とお辞儀をした。上下黒のスウェットに身を包み、髪は肩に届くほどまで伸びていた。

顔の下半分は白いマスクに覆われ、その表情を窺うことはできないが、

「すみません、マスク姿で失礼します。“中”ではインフルエンザが流行ってるんです」

という発言ひとつ取っても、大量殺人鬼とは程遠い印象である。口調は明るく、言葉遣いも終始丁寧だ。

SNSでターゲットを探した白石

拘置所内での暮らしぶりについて水を向けると、

「以前に比べたら、ずいぶんマシですよ。留置場のご飯を食べたことあります? 冷たく乾いてゴワゴワしている。
拘置所では3食とも温かいご飯にありつけるので、それだけでもありがたいと思ってます」

さらに、食事以外の楽しみを挙げさせたところ、

「そうですね、最近は差し入れてもらった漫画ばかり読んでます。
この歳になってベタではありますけど、『ドラゴンボール』とか『NARUTO』とか。あと、小説で面白かったのは町田康さんの『バイ貝』です。
仕事をしてカネを稼ぐと鬱が募ると考えた主人公は、買い物をして鬱を発散するんですが……。
説明は難しいけど、作者の言葉のセンスが最高におかしくて思わず吹き出しました」

「コレでして」

白石はまるで知り合いと立ち話でもするような調子でベラベラと喋り続ける。

「新聞は読んでませんが、ラジオは聞いてます。特に、平日の夕方に流れるピストン西沢さんがDJの番組。
彼の流す宇多田ヒカルやYUKI、大塚愛にDJ OZMAの曲が世代的に合っていて、“外”にいた頃を思い出します」

「週刊新潮」2018年12月27日号 掲載

http://news.livedoor.com/article/detail/15817569/
2019年1月1日 5時55分 デイリー新潮