・古いICBMに極超音速弾頭を搭載するロシア
・INF射程のミサイルの“極超音速化”は
・超音速対艦ミサイル搭載インド艦が米海軍と“共同展開”

2018年12月26日、モスクワでプーチン大統領が見つめるモニターには、大陸間弾道ミサイルの発射装置、サイロが映っていた。やがて、金属製の重そうな蓋が開き、炎が噴き出す中、液体燃料のICBM(大陸間弾道ミサイル)、西側からは、SS-19“Stilleto”が、ゆっくりと上昇した。

SS-19は、1960年代のソ連時代に開発され、ロシア軍ではRS-18、またはUR-100Nと呼ばれる液体燃料の大陸間弾道ミサイルで、IHS Jane's戦略兵器年鑑2018−19によると、1973年に初の発射試験、就役は1980年だった。

1983年までに性能向上が図られて、UR-100N UTTKhとなり、最大射程は1万kmに。そして、1990年には配備数がピークの360発に達した。以降、米露の軍縮条約や、衛星打上ロケットへの転用、新型ICBMの登場で、2018年現在までに残っているのは約50発。30基のサイロ用に、20〜30発が残っているだけ、との見方もあり(同上、戦略兵器年鑑)既に、来年春に試射が行われるRS-28サルマート重ICBMに交代するのは、既定路線だ。

では、そんな古い弾道ミサイルの試射をプーチン大統領は、どうして自ら視察に訪れたのだろうか。この日のUR-100N UTTKh大陸間弾道ミサイルには、新型の極超音速滑空体が、模擬弾頭として搭載されていた。

カザフスタンとの国境に近い、ロシア南東のオレンブルク州のドムバロフスキー基地から発射されたUR-100N UTTKhから切り離された極超音速滑空体は、地球の表面に対し水平方向に機動し、6000km離れたカムチャッカ半島のクラ射爆場に着弾したとされる。

この極超音速滑空弾頭装着ミサイル計画は「アバンガルド」と呼ばれたり、この弾頭を装着したミサイルそのものが、ロシアのメディアでは「アバンガルド」と呼ばれたりしている。

プーチン大統領「アバンガルドは、米ミサイル防衛を突破」

極超音速滑空弾頭を装着すると、従来のICBMと何が違うのか。

従来のICBMでは発射後、2段式であれ3段式であれ、ロケットエンジンの噴射終了後も、切り離された弾頭は、大雑把に言えば、慣性の力に従う形で標的の方向に上昇を続けるが、重力に引かれ速度は遅くなり、やがて上昇が止まると、逆に重力で加速され、大気圏に再突入。標的に向かって、“落下”する。その軌跡は、放物線、弾道となる。従来の弾頭は、一般に円錐形や、その変形の形状をしている。


一方、極超音速滑空体は一般に、三角形が膨らんだような形状をしていて、底の部分で滑空できるようになっている。ロケットエンジン噴射終了後、高度100km前後の大気圏外に出た滑空弾頭は、地球の外周に沿うように標的の方向に向かって“滑空”する。川や池で、平たい石を水平に近い角度で投げ入れると、いったん水中に潜った石が空中に飛び出し、再び水中に没するも、また空中に飛び出し、進んでいくように。

マッハ5以上を極超音速と呼ぶが、それをはるかに上回る速度に加速された極超音速滑空弾頭は、空気のない大気圏外から、大気圏に水平に近い角度で入ったあと、いわば揚力を得て、再び大気圏外に出る。それを繰り返して、標的の近くまで来たところで、標的の上から襲い掛かる。

また、空中を滑空するグライダーは動力がなくても、飛行中に向きが変えられるが、プーチン大統領が2018年3月1日にアバンガルド計画を披露した際には、CGを使い、ロシアの極超音速滑空弾頭は、自在にコースを変え、「米国のミサイル防衛網を突破できる」と強調していたのである。

ちなみに、ロシアの極超音速滑空体の最高速度はマッハ20と、プーチン大統領は言っていたが、12月26日の発射試験では、マッハ27に達したとの報道もあった。

極超音速滑空弾頭搭載ICBM、ロシアは2019年から配備

2018年12月29日現在、RS-18から切り離された極超音速弾頭の飛翔の様子や、弾着の映像などはロシア国防省から公開されていない。だが、プーチン大統領は26日、この試験結果を受けて「重大な成功であり、偉大な勝利である。新年への素晴らしい贈り物だ」とした上で「2019年から配備する」とした。

この極超音速滑空体弾頭は、新型ICBMであるRS-28サルマートにも、将来は搭載される見通しだが、6000kmという飛距離と既存の古いICBMに搭載しての“試験成功”だった点が気にかかる。

以下ソース先で

2018年12月30日 日曜 午前7:00 FNN
https://www.fnn.jp/posts/00406810HDK