2019/01/05 16:30 カラパイア
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 この地球上の5000種類以上もいる哺乳類のメスはみな乳房を持っている。

 乳房は構造上は外皮と密接な関係があり、大きさや形は動物によってそれぞれ違うが、哺乳類の共通点の1つだ。もちろん人間も例外ではない。

 だが、ホモ・サピエンスの場合はちょっと独特だ。他の動物に比べ、ヒトの女性の胸だけが常に大きいのだ。

 これはなぜなのか?進化上のミスなのだろうか?


■ 人間以外の哺乳類の乳房は一時的に発達する


 他の哺乳類は皆、排卵や授乳のときに一時的に乳房が発達する。基本的に、ミルクを出すためだが、授乳が終わり、ミルクが出なくなれば、乳房は消滅する。

 だが、これは人間のメスには当てはまらない。人間の乳房は、思春期に発達する。それは妊娠のためではない。人間の進化のある時点でなにかが変わったのだろうか? だとするとその理由はなんだろう? 
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■ いくつかの仮説を検証

 1987年に生物学者のティム・カロは、このテーマについてとなえられていたいくつかの仮説を調べてみた。

・乳房がお尻から発達した説
 ひとつは、母親が複数のことを同時にするのに、より動きやすいよう、乳房がお尻から発達して子供に授乳するようになったという説。
しかし、これではなぜ乳房が授乳期が終わった後も残っているかという疑問の答えにはならない。

・性的魅力説
 もっとも一般的な考えは、チャールズ・ダーウィンが最初にとなえ、のちに動物学者のデズモンド・モリスが1967年の著書『裸のサル』で探究した説だ。
モリスは、人間の乳房はメスの霊長類のお尻が排卵期に大きくなるのに代わって性的魅力として発達したと言っている。

 私たちの祖先は、二足直立歩行を始めたとき、生殖器がはっきり見えなくなった。オスはメスが性的に成熟しているのかどうかを確実に知る手段がなくなり、その結果、乳房が発達したのかもしれないというのだ。
少なくともこの説なら、どうして女性の乳房が思春期に大きくなるのかについてはわかる。だが、なぜ、その乳房が閉経しても残っているのか、その説明にはなっていない。
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■ 常に大きな乳房のメリットとデメリット

 人間の女性の乳房が大きいのは、ほかの哺乳類のメスよりも脂肪の量が多いからだ。脂肪が乳房の組織を膨らませ、その形を作っている。
ミルクのようなものだが、ミルクと違って一時的なものではない。乳房があまり大きいと、背中や胸の痛みを引き起こすことがある。また胸が大きい人は小さなしこりが見つかりにくく乳ガンの発見が遅れることもある。

 毎年、およそ150万人が乳ガンの診断を受け、2015年にはそのうち57万人が亡くなっている。他の霊長類に乳ガンはそれほど多くない。
乳ガンの危険性は年をとるほど高くなるが、ほかの霊長類はそこまで長く生きないせいもある。もしかしたら、乳房を一生かかえていることと、なにか関係があるのかもしれない。
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 ガンは急速に組織を分裂させるものだが、細胞というものは常に生まれては死んでいる。その細胞のサイクルの中で、DNAの修復にミスが生じることがある。
その誤った細胞がガン細胞になる可能性がある。ガンによる細胞分裂が早いほど、ミスの機会も増える。

 乳ガンのリスクを減らすために、両乳房を切除してしまうという手段もあるが、人間の乳房は実質的な役割としてだけでなく、人間の文化や社会にしっかりと根づいている。
乳房があることで、女性たちは女性であることを意識する。また、異性を魅了する力があることも知っている。良くも悪くも人間の乳房は健在なのだ。