フランス政府が3社の「完全統合」を求めるのに対して、日産・三菱に仏政府の介入が及ぶことを警戒するゴーン氏だったが、態度が変わったという。

 改選期を迎えるゴーン氏にマクロン大統領が「完全統合するなら、ルノーCEOの再任を認める」と突き付けたといわれ、条件をのんだゴーン氏は、経営統合に動き始めた。

 慌てたのが日産・経産省だ。そんななかで「ゴーン逮捕」の口火が切られた。

 海外メディアが「国策捜査」と疑うおかしなことは、確かにいくつかある。

 ゴーン氏の逮捕容疑は、有価証券報告書への報酬の過小記載が金融商品取引法違反とされた。2011年3月期から5年間で計約50億円の報酬を申告していなかったという。

 GMやフォードなどの経営トップが年間20億円前後の報酬を得ているなかで、ゴーン氏は年間報酬を、半分の約10億円と低く記載した。記載しなかったのは、その分は退職後に支払う「約束」だったからだとされる。

 組織ぐるみで不正な経理処理を行い「粉飾決算」の罪に問われた東芝で、経営者は逮捕されていない。

 有価証券報告書虚偽記載というのは、投資家の判断を誤らすような不正を禁止している。赤字を黒字になるように偽装した東芝は、東京証券取引所も悪質と判断し、東芝を特設注意市場銘柄に移したほどだ。

 東芝の犯罪に比べ、ゴーン氏はいきなり逮捕されるほどの「重罪」といえるかどうか。

 奇妙なのは日産の経営陣である。

 経営陣が問題を知った発端は、内部からの通報によるとされるが、不正を疑われる会計処理がトップにあったとしたら、監査役が調べ、本人や周辺から事情を聞く。

 大掛かりな不正なら、第三者委員会を設け、徹底して調べる。さらに監査法人が外部の目として会計処理を点検する。それで不正が明らかになったら検察などに告発する、というのが、企業の標準的なやり方だ。

 西川社長は11月19日の記者会見で、「調査委員会はゴーンさんから聞いたのですか」と問われて、「聞いていない」と答えた。

 不正が疑われる当人の言い分も聞かず、検察と司法取引していた。知らぬはゴーン氏ばかり。ゴーン氏が拘置されていて出席できない取締役会で会長解任を決め、ルノーによる会長指名を拒否した。