海底地形の公式名を審査する国際会議「海底地形名小委員会」(SCUFN、スカフン)で日本が提案し承認された地形名が、計500件を超え、米国とともに世界最多レベルに達したことが判明した。スカフンから「申請の質」を高く評価されたためで、日本近海で命名活動を活発化させている中国との“命名競争”を一歩リードした。

 「完璧に近い成果を得た」。政府関係者は振り返る。日本は沖ノ鳥島周辺と九州パラオ海嶺南部海域で申請した37件中35件が承認、南鳥島周辺では38件全てが認められた。海上保安庁の海洋調査に基づく正確な海底地形図などの質が評価されたことに加え、地道な「根回し」も承認につながったとみられる。

 日本は同海嶺海域に有する大陸棚の延長を国連大陸棚限界委員会に申請中だが中国は反対。一方、同海域ではパラオも大陸棚の延長を申請中だ。日本は関心が重なる同海域の対立や申請の重複が起こらないよう、名称や位置についてパラオと事前協議を実施。結果的に、日本の申請はほぼすべてが順調に受理された。

 これに対し、中国は関係国と調整する姿勢はみせず、同海嶺海域で申請した4件のうち1件で日本、2件でパラオと重複。4件はいずれも承認されず、各国との協議を求められた。

 南極周辺海域の地形では古代中国の思想家「孔子」と命名しようとしたものの、関連性のなさを指摘された。また、共通の特徴を持つ地形群では日本の「星座」のように統一化した命名が求められるが、ルールから外れてばらばらの名称を付けようとして承認されなかった事例もあるなど、申請には粗さが目立った。

 ただ中国は日本近海での活発な命名活動を継続しており、沖ノ鳥島や九州パラオ海嶺海域周辺では16件中3件、南鳥島周辺では3件中1件が認められた。「海洋強国」を目指す中国にとり同海域は海洋戦略の要衝で、軍事的活動の強化と並行し、命名に向けた強引な海洋調査を加速させる恐れがある。

 スカフンでは国家間の主張が対立する海域などの申請は審査しないルールだったが、今回、同海嶺の南部海域で日中が重複した案件などを保留した上で、協議を行うよう求めた。今後、会議の政治色がより強まる可能性がある。

 一方、今会議では新議長が韓国から選出。韓国は不法占拠する竹島(島根県隠岐の島町)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)で命名を申請した経緯があり日韓関係が悪化する中、審査への悪影響も懸念される。

2019.1.8 00:14
https://www.sankei.com/politics/news/190108/plt1901080001-n1.html