2019年1月21日 yomiDr.
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190121-OYTET50004/?catname=news-kaisetsu_news

 脳内の神経伝達物質ヒスタミンの放出を促す薬を飲むと、記憶力が向上するとの研究結果を、東京大などのチームがまとめた。記憶の仕組みの解明につながる可能性があるという。米医学誌電子版に掲載された。

 ヒスタミンはアレルギーを引き起こす物質として知られるが、脳内では睡眠や食欲、記憶などを調整する働きをしている。抗ヒスタミン薬を服用すると記憶が低下することから、チームは、ヒスタミンの放出などに関わる脳の神経を刺激し、記憶にどのような影響を及ぼすか検証した。

 研究では、ヒスタミンの分泌を促す薬を使用。20歳代の健康な男女38人に128枚の写真を見せ、1週間後に別の写真も混ぜ、見たことがあるかないか、似たものかどうかを尋ねた。

 事前に薬を飲まず、正答率が最も低い25%だったグループは、薬を飲むと2倍の50%に上がった。一方、薬を飲まず正答率が高かったグループに、薬を飲んでもらったところ、逆に成績は下がった。

 マウス実験では、初めて出会った物に興味を持つ習性を活用。二つのおもちゃを見せた後、片方を別の新しい物に替えると、新しい方に近寄るが、3日たつと区別できなくなった。しかし、薬を投与すると1か月後でも、交換した新しい方に近寄った。

 チームのメンバーで北海道大講師の野村洋さん(薬理学)は「ヒスタミンが神経細胞を刺激し、薄れていた記憶を回復させる一方、鮮明な記憶には、刺激が逆に不鮮明にさせるように働くのではないか」と話している。