https://www.yomiuri.co.jp/science/20190128-OYT1T50098.html

活性炭の100倍「プルシアンブルーの脱臭剤」
2019年1月29日 19時20分

 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などの研究グループは、青色の顔料「プルシアンブルー」を利用した高性能の脱臭剤を開発したと発表した。元々は放射性物質除去のために研究を進めていた素材だった。活性炭などに比べ、臭いの元となるアンモニアを5〜100倍多く吸着するという。グループは畜産業やトイレなどでの利用を見込んでいる。

 産総研によると、この顔料は、原子レベルで見ると、鉄イオンなどからなる格子状の構造をしており、格子の隙間にアンモニアなどを吸着する。高橋顕・産総研主任研究員(32)らは、一部の鉄を銅に置き換えることでアンモニアを吸着する効率を大幅に高めた。また、洗浄すれば何度でも使えるという。

 この脱臭剤と送風機を組み合わせた脱臭機を養豚場の豚舎(48平方メートル)で使ったところ、空気中のアンモニア濃度が7割以上低下した。夜間は臭いがほとんど気にならないレベル。

 この顔料はセシウムも吸着することがわかっており、グループは元々、顔料を使って東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質を除去する研究をしていた。約3年前にアンモニアも効率良く吸着することに気づいたという。

 高橋研究員は「従来の脱臭機よりコストを10分の1以下に抑えられる可能性がある。数年後の実用化を目指したい」と話している。

 産総研によると、国内で排出されるアンモニアのうち、約6割を畜産業が占める。悪臭のほか、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)と結びついて微小粒子状物質(PM2・5)の原因にもなるという。