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かねてよりその危険性が指摘されている、日本の小中学校の組み体操(人間ピラミッド)。今年に入り、国連の「子どもの権利条約」委員会が「傷害などからの保護」を定めた同条約に違反するとして、組み体操を審査対象にすることが報じられた。

過去に生徒の骨折などの事故も起きているなか、なぜ未だに禁止にならないのか。学校教育におけるリスクについて研究する教育社会学者の内田良氏によると、最近になって再び巨大化の兆しさえあるという。

巨大組み体操は過去のもの、ではない

巨大組み体操の危険性が知られるようになって、数年が経過した。ついには、国連も動いた。

学校がウェブサイトに巨大ピラミッドやタワーの写真を誇らしげに掲載するのは、すっかり過去のことになった。多くの学校で巨大組み体操は姿を消し、運動会も安心して観ていられる状況が訪れつつある。

ところが一部の地域で、巨大組み体操がいまもなお、ひっそりと披露されつづけている。それどころか、再び巨大化の兆しさえ見えつつある。学校はなぜ、高いリスクを冒してまで巨大な組み方にこだわりつづけるのか。

中略

国の注意喚起で事故が減少したが…
さすがにこれには、国も口出しをした。巨大組み体操の危険性をマスコミが次々と報じるなかで、スポーツ庁は2016年3月に「組体操等による事故の防止について」という通知を発出し、次のように注意を喚起した。

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各学校においては、タワーやピラミッド等の児童生徒が高い位置に上る技、跳んできた児童生徒を受け止める技、一人に多大な負荷のかかる技など、大きな事故につながる可能性がある組体操の技については、確実に安全な状態で実施できるかどうかをしっかりと確認し、できないと判断される場合には実施を見合わせること。
(スポーツ庁「組体操等による事故の防止について」より抜粋)
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運動会の一種目にすぎない組み体操に国が口を出すのは異例の事態である。それほどに国の危機感は大きかったと言える。

この効果は絶大で、国の動きに前後して自治体でも独自に規制が進み、統計が取り始められた2011年度から2015年度まで8,000件台で推移してきた事故件数は、2016年度には5,000件台に一気に減少した(詳しくは、拙稿「組み体操の事故35%減少」を参照)。

ここまでの話であれば、ひとまず学校現場はマシになったと言える。

ところが、たしかに全国的な傾向として巨大組み体操は縮小に向かったものの、一部の地域では巨大な組み方がいまもひっそりと継続されている。


一部の地域で再び巨大化

中略

今年度の春、ある関西圏の公立中学校の体育祭で9段ピラミッドが披露されたことを私はツイッターとインスタグラムで知って、かなり脱力した。そして今月に入って、兵庫県教育委員会が公開した資料はまさにそれを裏付けるものであった。

兵庫県(神戸市は除く)の公立小中学校において、2018年度はピラミッドの最高段数は小学校で7段であり、その実施校数は昨年度の9校から12校に増えている。中学校の最高段数は9段で、昨年度は0校だったが、今年度は1校がそれを披露した(なお、私がツイッターとインスタグラムで見つけた9段ピラミッドは兵庫県のものではない)。

兵庫県は全国でもっとも組み体操が盛んな地域として知られている。大阪経済大学の西山豊教授が日本スポーツ振興センター提供のデータをもとに分析した資料によると、兵庫県は日本でもっとも組み体操による負傷事故数とその事故率が高い。

その多発する事故を受けて、兵庫県教育委員会は2015年度より独自に詳細な事故状況を調査・公表している。

兵庫県教育委員会の資料をもとに作成

兵庫県の資料には、前年度に比べて段数を上げた学校と下げた学校それぞれの学校の数(段数の大きさは関係ない)が記載されている。過年度の調査資料も参照したうえでその推移を整理してみると、ピラミッドやタワーの段数を上げる傾向が強まっていることがわかる。小学校と中学校のいずれにおいても、ピラミッドとタワーの両者で、前年度よりも段数を上げたという学校の数が、2016年度から2018年度にかけて増加している。

後略

http://news.livedoor.com/lite/article_detail/15951749/