【フランクフルト=深尾幸生】英ジャガー・ランドローバー(JLR)が7日発表した2018年10〜12月期決算は、最終損益が31億2900万ポンド(約4450億円)の赤字だった。中国での販売不振に加え、英国の欧州連合(EU)離脱で先行き不透明感が強いことから将来の収益力を見直し、31億2200万ポンドの減損損失を計上した。

JLRのラルフ・スペッツ最高経営責任者(CEO)は「今回の減損は自動車業界を襲う地政学や技術や規制の逆風にJLRがとる決断に沿ったものだ」と述べた。

不動産や設備などの有形固定資産で15億6500万ポンド、無形資産で15億5700万ポンドをそれぞれ減損する。今後の販売や利益の見通しを下方修正したために資産の評価をし直した。

売上高は前年同期比1%減の62億2300万ポンドで、減損などの特殊要因を除いた営業損益は1億5900万ポンドの赤字だった。1月に発表した4500人の人員削減にともなう費用も2億ポンド計上した。

期中の販売台数は前年同期比6%減の14万4602台だった。北米と英国で増加したものの、中国は47%減と落ち込んだ。中国は7〜9月も44%減だった。

中国での販売不振は弱い販売網が影響した。JLRは地方都市に販売店を多く抱え、経済減速の影響を強く受けた。欧州産車の関税引き下げや米国産車への引き上げなどで価格が不安定になり、競合と比べて大幅な値引きを余儀なくされた。

今後の見通しも厳しい。JLRは決算発表資料で、主要5地域のうち中国と英国で「赤信号」、米国と欧州などでも「黄信号」を並べ、警戒感をあらわにした。

英国ではEU離脱を3月に控える。離脱の条件や為替の動向によっては主に英国で生産し輸出するJLRへのダメージは大きい。「合意なき離脱」になった場合は、「生産・調達戦略の見直しが必要になる」としている。

多目的スポーツ車(SUV)が主力で販売比率の高いディーゼル車の市場縮小も響く。ディーゼル離れは大陸欧州でも同じで、欧州市場も力強さを欠く。米国は欧州産車への関税引き上げリスクがくすぶっている。

19年3月期通期の営業利益も赤字を見込む。20年3月期までに25億ポンドのコスト削減策を進めており、22年3月期までに売上高営業利益率3〜6%への復帰を目指す。

JLRは競合する高級車大手と比べて研究開発費の比率が高く、規模に対して車種数が多い。今後も電動化など次世代技術への投資が膨らむ見通しで、投資のための利益を継続的に生み出せるコスト改革が急務になっている。

2019/2/8 4:32
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41052670Y9A200C1000000/