資生堂が8日発表した2018年12月期の連結決算は、純利益が前の期比2.7倍の614億円だった。08年3月期以来の最高益更新となった。化粧品の主力ブランドが大きく伸びた。けん引役だった中国の需要鈍化を懸念する声もあるが、会社側は日本製の高価格帯商品へのニーズは大きく揺らがないとみる。20年12月期までの中期経営計画の業績目標を引き上げた。

「中国の店頭を見る限り化粧品需要の減速感はまったくない」。魚谷雅彦社長は8日の決算会見で、市場でくすぶる消費減退懸念を一蹴した。

中国では所得水準が高まり中間層が拡大。身近なぜいたく品として、品質に定評がある日本製の化粧品を買い求めている。ただ足元では米中貿易摩擦などを背景に中国経済は変調の兆しが出ており、中国の小売売上高の伸びは18年11月に15年半ぶり水準まで鈍化した。

もっとも化粧品の需要は耐久消費財などとは異なるようだ。資生堂の18年12月期通期の中国事業の売上高は現地通貨ベースで32%増。第4四半期(10〜12月期)の増収率は33%だった。第1〜3四半期でそれぞれ27%、38%、31%と推移する流れは大きく変わっていない。この点はプロクター・アンド・ギャンブルやエスティローダー、ロレアルなど海外大手の中国・アジア事業が好調を続けているのと一致する。

資生堂の18年12月期の売上高は9%増の1兆948億円と会社予想を上回る一方、営業利益など各利益は下回った。その理由について魚谷社長は「成長を続けるため、あえて投資を積み増した」と説明する。10〜12月期の中国でのマーケティング費用は前年同期比70億円増。1月の中国店頭で高価格帯ブランドの売上高は40%伸びた。

19年12月期の純利益は前期比23%増の755億円を見込む。営業利益は11%増の1200億円と、18年3月に公表していた中期経営計画の目標(基本計画で1200億円)を1年前倒しで達成する見通し。このため8日の決算発表を踏まえて20年12月期の営業利益目標を1500億円と300億円上方修正した。

訪日外国人(インバウンド)の購買動向には変化も出ている。中国で1月からネット通販(EC)事業者に対する規制が強化され、転売業者の活動が停滞。国内大手百貨店の1月の免税売上高は軒並みマイナスだ。

資生堂もインバウンド売上高のうち転売業者が2割程度を占め、既に影響が出ているという。ただ最終消費者の需要が堅調であれば、転売業者の代理購買が減っても一般客や中国現地での店頭販売、越境ECなどで補えるとみている。

資生堂が恐れるのは需要より供給不足だ。18年12月期は売上高にして400億〜500億円、営業利益で200億円前後の機会損失があったもよう。資生堂は長期目標として売上高2兆円と前期の約2倍を目指しており、21年までに国内の工場を現在の3つから段階的に6つに増やす。大きな目標の達成へ、リスク覚悟でアクセルを踏み込む。

2019/2/8 21:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41083850Y9A200C1DTC000/