愛知県安城市で2013年、重度の知的障害のあった鶴田早亨(はやと)さん(当時28歳)が障害者支援施設を抜け出して死亡した事故を巡り、遺族が施設を運営する社会福祉法人に約7200万の賠償を求めた訴訟の判決が22日、名古屋地裁で言い渡される。遺族は訴訟で、将来働いて得られたはずの「逸失利益」を基に賠償額が算定されることに疑問を投げかける。

 訴状によると、鶴田さんは13年3月22日、施設を抜け出し、近くの商業施設に陳列してあったドーナツを大量に口に詰め込んで窒息死した。食べ物を口に詰め込んでしまうため施設では食事を一口ずつ小皿に移していた。施設側は内側から開けられない構造の扉が何らかの原因で開き、鶴田さんが抜け出したとみられると説明した。

 事故後、施設側は遺族に1800万円の支払いを申し出たが、遺族側は「同世代の健常者に対する死亡賠償金の4分の1にも満たない」と折り合わなかった。鶴田さんの兄明日香さん(39)は14年8月、事故は施設の安全配慮義務違反が原因として提訴し、施設側は鶴田さんが抜け出すのは予測不可能などと請求棄却を求めている。

 死亡に関する損害賠償訴訟では、慰謝料などを積み上げて賠償金額を決めるが、大きな部分を逸失利益が占める。逸失利益は、生前の収入や死亡しなかった場合の勤続可能年数などから計算する。

 明日香さん側は、就労が難しかった鶴田さんには逸失利益が認められず、最低賃金や障害年金を基に算定しても「法の下の平等に反する低額なものになる」と主張し、全年齢の男女の平均賃金をベースに逸失利益を計算するよう求めている。

 重度の知的障害者の死亡事故を巡っては、青森地裁は09年、当時16歳の男性の就労可能性を認め、最低賃金をベースに逸失利益を認める判決を出した。12年には名古屋地裁で、当時15歳の男性について障害年金から算出した逸失利益を認める和解が成立し、大阪地裁では17年に当時6歳の男児に関して、全労働者の平均賃金に基づいた逸失利益を認める和解が成立している。

 しかし、明日香さんの代理人の森田茂弁護士は「これらは少数例で、一般的になっていないのが実情」と指摘する。また、将来の就労可能性が逸失利益を認める大きな要因となっており、鶴田さんのような成人で逸失利益が認められた例はないとみられる。森田弁護士は「逸失利益は就労の実態や将来の可能性を基に考えるべきではない」と話す。

 以下ソース先で

 2/17(日) 19:25
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190217-00000038-mai-soci
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20190217-00000038-mai-000-view.jpg