【ワシントン=永沢毅】2020年の米大統領選で、共和党・トランプ大統領の打倒をめざす民主党で左派系候補の出馬が相次いでいる。大企業を優遇し地球温暖化にも無関心なトランプ氏に対抗し、いずれも格差是正や気候変動対策を重視しているのが特徴だ。これらの政策に関心が高い「ミレニアル世代」が有権者の中で存在感を増しつつある事情もある。

19日に立候補を表明したバーニー・サンダース上院議員は16年大統領選で国民皆保険や大学の無償化といった格差是正の政策を主張。草の根で若年層の熱狂的な支持を得て、ヒラリー・クリントン元国務長官と接戦を演じた。「私の訴えた考えは今や政治の主流となった」。サンダース氏は米メディアのインタビューなどでこう力説した。

サンダース氏の発言通り、16年には異端視された主張はいまや民主の他の候補の多くが受け入れる。国民皆保険はカマラ・ハリス、エリザベス・ウォーレン両上院議員らが公約に掲げた。相続税の強化を検討するサンダース氏と富裕層への増税構想を提唱するウォーレン氏は手法は違うが、格差是正で相通じる。再生可能エネルギーに投資して温暖化ガスの排出量を減らす「グリーン・ニューディール構想」にも候補の賛同が集まる。

左派的な主張が広がる一因には、大企業の競争力の底上げへ法人税率を大幅に引き下げ、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱を決めたトランプ政権へのアンチテーゼがある。「保守層への配慮に余念がないトランプ氏に対抗するには、左派的な主張を先鋭化するしかない」。ある民主党関係者はこうみる。

もう1つは1980〜96年生まれのミレニアル世代の存在がある。米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、「政府がより大きな役割を果たすべきだ」と考える割合はこの世代の64%にのぼり、選挙権を持つ世代では最多となった。地球温暖化への関心が高く、所得再分配を重視する「大きな政府」への志向が強い。

中間選挙では同世代の中核を占める18〜29歳の有権者の67%が民主に投票し、32%の共和の2倍となった。世代別の人口では今年中に約7300万人と首位になり、ベビーブーマー世代(46〜64年生まれ)を追い越す。先行きを考えると、ミレニアル世代を意識した政策を打ち出すのは理にかなう。

ただ、16年大統領選でトランプ氏の勝利の原動力となった中西部では、必ずしも左派的な主張が受け入れられるわけではない。近く出馬の是非を判断するバイデン前副大統領は中道派と目されており、世論調査では首位に立っている。左派系との路線闘争が激しくなる可能性がある。

日本経済新聞 2019/2/20 14:44
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