死亡事故、歩道橋が「死角」に 再度の要請で大阪市が撤去へ
毎日新聞 2019年2月27日 06時30分(最終更新 2月27日 06時30分)

 大阪市東住吉区の歩道で昨年10月、自転車同士の衝突後に車道側に転倒した会社員の女性(50)が、トラックにひかれて死亡する事故が起きた。歩道の中央には歩道橋の階段があり、現場は見通しが悪い「死角」になっていた。この歩道橋を巡っては、7年前にも地元が危険性を指摘し、市に撤去を求めていたが、そのまま残された。事故後の再要請を受け、市は撤去を決めた。

 大阪府警東住吉署によると、事故は昨年10月16日早朝に発生。自転車に乗っていた会社員の男性(26)が、歩道橋階段の手前で右側へ急に曲がってかわした。その直後、自転車で対向してきた女性と衝突。現場にガードレールはなく、車道側に倒れた女性は10トントラックにひかれて死亡した。

 同署は今月12日、男性が安全確認を怠ったとして重過失致死の疑いで書類送検。男性は「歩道橋をよけようとしてハンドルを切ったが、女性に気づくのが遅れた」と供述している。


 市によると、歩道橋は1969年に設置され、片側2車線の府道の両側にある歩道を結ぶ。歩道(幅約5・5メートル)の中央に階段(幅2メートル)があり、自転車は階段の左右のどちらかを通ることになるが、進行方向に決まりはない。

 住民らによると、この階段で視界を遮られ、自転車や歩行者が衝突する事故はこれまでにも起きていた。現場近くの建築会社社長(41)は2012年4月、「歩道橋があるため歩道の幅が狭い。死角ができ、歩行者と自転車が何度もぶつかっている」と市に指摘し、歩道橋の撤去を求めた。

 市は同年11月に現地を調査。歩道橋の利用者は少なく、近くに横断歩道があることなどから、撤去基準を満たしていることを確認した。ただ、当時は階段の目隠し板を取り除いて見通しを良くする対策にとどめ、撤去しなかった。市の道路課は「記録が残っておらず、撤去しなかった理由は分からない」としている。

 今回の事故後、社長は再び市に撤去を要請。地元の連合振興町会も昨年末、同様の要望書を市に提出した。これを受け、市は撤去に向けた設計費を19年度予算案に計上。撤去費用は約2000万円になる見込みで、市は21年度中の完了を目指す。社長は「人が亡くなるまで撤去されなかったのは残念だ」と語った。

 市によると、市内に歩道橋が182基あり、うち歩道中央に階段があるのは約50基。他にも、地元が撤去を求めている歩道橋は複数ある。だが、費用が高額なため撤去は年間1〜2基にとどまっている。【柴山雄太】

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