■30分制限が消える?

日本とEUは、貿易や投資などの経済関係を強化するため、昨年10月に経済連携協定(EPA)を締結した。

そしてこの日EU・EPAが、今年の2月1日に発効(効力を発すること)した。これにより双方の工業製品にかかる関税が最終的に100%撤廃されるほか、農林水産物も最終的に品目数で約98%の関税が撤廃される。すでに大手スーパーではEPA発効記念として、輸入ワイン等がセールとなっていたりするので、ご存じの方もあるかもしれない。

話変わって、現在録画の連続記録分数が30分以内に制限されているデジタルカメラが多いのはご存じだろうか。この制限は、EUが設定していた関税対策だと言われている。

過去EUでは、ビデオカメラには関税をかけてきたものの、デジタルカメラに対しては関税を免除してきた。しかしデジタルカメラの動画機能搭載が増えてきた事を受けて、改めて一部のカメラをビデオカメラと再分類し、関税を適用するようになっていった。

これまでEUでは、ビデオカメラを2タイプに分類して、関税をかけていた。一つは「テレビビデオカメラ」、もう一つは「ビデオカメラその他」である。どちらに分類されるかで、課税率が違う。

テレビビデオカメラに該当するのものは、「ビデオの解像度が800×600ピクセル以上」、「フレームレートが23fps以上」、「連続録画時間30分以上」という、3つの基準をすべて満たすものは、上記のどちらかに分類される。

昨今のカメラの動画機能を考えてみると、解像度は少なくともフルHDは当たり前、フレームレートは最低でも24fpsは譲れないところだ。一般的に受け入れられるのは、30から60fpsだろう。そうなると3つの関税条件のうち、妥協するなら連続録画時間しかないわけだ。

ただし、3つの条件のうち1つが満たされないからといって、ただちに関税フリーだったわけではないようだ。1つ以上の条件を満たす場合は、主な機能や別の条件によって製品が分類され、何らかの課税対象となる。それでも30分制限をかけていたのは、ビデオカメラとしての関税よりも“そっちのほうがマシ”だったからであろう。

実際に「テレビビデオカメラ」への関税は、2016年の段階では4.1%だが、「ビデオカメラその他」に分類されると10.5%であった。その後、毎年引き下げが行なわれてきたが、今回のEPAで即時撤廃となった。

■「日本製」の定義

日EU・EPAの関税撤廃は、当然ながら日本製の工業製品が対象となり、日本以外の国で製造された製品は対象外である。では、日本メーカーのデジタルカメラは、日本製なのか。

残念ながら、そういうわけにはいかないようだ。JETRO(日本貿易振興機構)が提供する資料によれば、工業製品の原産性の判断基準として、「品目別原産地規制(PSR)を満たす産品」が適用される。

これは、国外からの原材料を使っていても、国内での組み立てや加工等の結果として原材料に実質的な変更があった場合は、国内製品となる。例えば腕時計などは、ガラス、ウォッチムーブメント、バンドなどを国外で生産しても、日本で加工・組み立てを行なえば、日本製品となり、EPAの対象となる。パーツは国外でも、アセンブルが日本であれば、日本製となるわけだ。

デジタルカメラは、上記のようなケースが当てはまるのか。今回はキヤノン、ソニー、パナソニックに取材させていただいたが、どのメーカーも上記の条件には当てはまらず、むしろ逆パターンである事がわかった。つまり、レンズやセンサーなどの主要パーツは日本国内製造品もあるが、組み立てが海外であるため、日本製とはならない、というわけである。つまり、EUの関税には相変わらず“引っかかり続ける”わけだ。

それでも一部製品は、30分を超える録画時間を持つ製品もある。これらは、デジタルカメラとしてではなく、「テレビビデオカメラ」としての関税を支払っている。

一部報道では、2月22日より発売が開始されたソニーの「α6400」が30分制限を撤廃したことでEPAの恩恵だという憶測も出ているが、これは誤りである。ソニー広報に確認したところ、α6400の制限撤廃はあくまでも商品戦略としてそう設計したという事であり、EPA発効のタイミングと製品発売が重なったのは偶然だという。

以下ソース先で

■「30分以上」の必要性

■総論

2/27(水) 8:00
Impress Watch
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190227-00000020-impress-ind