浄土宗の人権同和室長と人権センター長を兼ねる幸島正導総長公室長は、大本山の一つ清浄華院(しょうじょうけいん)の法主人事を巡る1月末の推戴委員会で、同院が再任を求める前法主を「認知症の傾向がある」と発言し撤回した問題について、4日の定期宗議会一般質問で「不適切な発言だが、人権侵害にはならない」と答弁した。一部の議員は「それが宗の見解か。人権感覚が低い。悪気がなかったと言うのは一番根が深い」と批判した。

 推戴委は非公開で15人で構成。司会を務めた幸島氏は冒頭の経過報告で、昨年末に同院前法主の真野龍海氏(96)と会った際の感想として発言したが、同院側は認知症の診断が出ていない中で偏見を助長すると問題視していた。

 一般質問ではベテラン議員が幸島氏の発言を受け「(宗として)どう(対応に)動いたのか」と質問。幸島氏は「(認知症と)断定したわけでない」と述べた。これに対し、この議員は「差別発言や人物を毀損(きそん)するような表現(をされた人)は公的なところに(抗議を)言えず、自浄作用が働かない。研修を受けて意識改革してもらいたい」とただしたが、かみ合わなかった。

 この議員は取材に対し、「人権問題に関心が薄いのは宗教者に足り得ない。宗の人権意識はこのままだとまずい」と批判した。

 この日の宗議会では清浄華院の法主人事を巡る質問も相次ぎ、推戴委を公開にすべきだとの意見も出たが、宗側は議員に限って議論の内容を開示する考えを示した。【中津川甫】

毎日新聞 2019年3月5日
https://mainichi.jp/articles/20190305/ddl/k26/040/457000c?inb=ra