2019年3月、フィンランドの南に並ぶバルト三国で最も北に位置する小国エストニアで国会議員選挙が行われ、元大関・把瑠都として知られるカイド・ホーベルソン氏が出馬して話題となりました。この国会議員選挙では、紙による投票だけではなく、インターネットを介してPC・スマートフォンからも投票が可能となっていました。世界各国が透明性や安全性を懸念して電子投票システムに対して慎重になる中、世界で初めて国政選挙を電子化した国として知られるエストニアでは、電子投票システムが積極的に選挙に導入されています。

Riigikogu elections 2019 Voting and election result
https://rk2019.valimised.ee/en/election-result/election-result.html

Estonia Election: What U.S. Can Learn From Electronic Voting | Time
http://time.com/5541876/estonia-elections-electronic-voting/


2019年3月に行われたエストニアの総選挙の結果は、野党である改革党が101議席中最多の34議席を獲得して第一党に輝きました。与党で主にロシア系住民から支持を集める中央党は26議席と、1議席を減らしたものの第二党となりました。また、極右政党の保守人民党はほぼ3倍近い19議席にまで増えました。なお、中央党から出馬したホーベルソン氏は一度落選したものの、当選者が辞退したために繰り上げ当選を果たしています。

エストニアのメディアであるEstonian Newsは「議席がこれだけ大きく変化したのは、電子投票による後押しが大きい」と論じています。Estonian Newsによると、電子投票による有効票だけを見た場合、一番多かったのが全体の40%を占める改革党でしたが、続いて票を集めたのは中央党ではなく、なんと保守人民党だったそうです。また、改革党が得た16万2332票のうち、およそ60%が電子投票によるものだったことが判明しました。

エストニアでは2005年の地方議会選から電子投票システムが導入され、2007年には世界で初めて国政選挙に電子投票システムを採用したとして話題になりました。エストニア政府は、人口130万人のうちおよそ30%が電子投票システムを利用していて、1回につき1万1000時間もの選挙関連の労働時間が削減できると述べています。

エストニアの国民は、インターネットに接続しているPCとエストニアのIDカードさえあれば、世界中のどこにいても選挙に参加することができます。有権者は選挙用サイトからダウンロードした投票用ソフトウェアをインストールし、IDカードに記載されている数字とパスワードを入力し、候補者を選択するだけでOK。買収や脅迫に対する対策として、一度投票を行っても期間内であれば投票内容を変更できるシステムになっています。

紙と鉛筆ではなくコンピューターで票を管理する電子投票システムは、エストニアだけではなく、さまざまな国で検討・導入が行われています。例えば、アメリカでは一部の州が電子投票システムを採用していて、議会議員選挙や大統領選挙でも運用されています。しかし、2016年に行われた大統領選挙では、電子投票機が故障したり、タッチパネルのキャリブレーションが不十分で正しく投票できなかったりといった問題が頻発したと報じられていました。

また、2018年3月には11歳の少年がイベントにおいてフロリダ州のオンライン投票サイトにハッキングして投票数を改ざんする様子を実演し、システムの安全性に疑問が示されました。また、投票所に設置されるタッチパネル式の電子投票機も、アルミ缶を使って封印を解除してハッキングすることが可能だと指摘されました。その結果、アメリカでは「電子投票システムに対して慎重であるべき」だという意見が強くなっています。

エストニアで運用されている電子投票システムでもその安全性や信頼性に問題点が指摘されています。エストニア政府が初めてオンライン投票を国政選挙に導入した2007年の国会議員選挙では、オンライン投票システムがDDoS攻撃にあい、大規模なシステム障害が発生しました。この攻撃には隣国ロシアが関与しているのではないかという疑いが報じられましたが、ロシアは関与を否定しています。

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https://i.gzn.jp/img/2019/03/11/estonia-elections-electronic-voting/00.jpg

https://gigazine.net/news/20190311-estonia-elections-electronic-voting/