全国の郵便局で2015年度以降、局員の保険業法違反に当たる営業行為が68件発覚し、監督官庁の金融庁に届け出ていたことが関係者への取材で分かった。内規に違反する不適正な営業も約440件に上ることが判明。保険の内容を十分理解していない高齢者に無理やり契約を結ばせるなど、悪質な事例が目立っている。

 西日本新聞は、郵便局を運営する日本郵便(東京)の内部資料を関係者から入手した。保険業法違反の営業として金融庁に届け出た件数は15年度16件▽16年度15件▽17年度20件▽18年度はこれまでに17件。九州支社管内分は計7件あり、17年度は全国最多だった。

 九州支社管内では16年3月、局員が「88万円の保険料を支払えば1年後に100万円がもらえる」と虚偽の内容を記した資料を示して契約を結んだことが発覚。近畿支社管内の局員は17年10月、認知症の高齢者(85)に保険内容を説明しないまま契約させていたことなどが挙げられている。

 「説明不十分」「不適切な代書」など、内部で「不祥事故」と呼ばれる不適正な営業の内訳は、15年度124件▽16年度137件▽17年度181件−だった。

 全国の郵便局に寄せられた営業に対する苦情は昨年までの3年半で1万4千件超に上り、高齢者に関わる内容が約6割を占めた。「貯金と説明を受けて契約したら、保険証書が送られてきた」「局員に『帰ってほしい』と言ったのに4時間も居座られた」など、強引な営業行為や契約締結への苦情が目立った。

 消費者問題に詳しい桜井健夫弁護士(東京)は「低金利の時代になり、郵便局が販売する貯蓄型の生命保険は魅力が薄れた。強引に営業するのではなく、顧客から何を求められているのか根本的に見直すべきだ」と指摘している。

 西日本新聞の取材に対し、日本郵便は「具体的な件数は公表していないが、不適正な営業が根絶できていないことは極めて残念だ。教材による指導など改善に向けた取り組みを強化している」と文書で回答した。

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【ワードBOX】保険営業と郵便局の保険

 保険業法は、保険の勧誘を行う際、契約内容の情報提供や、顧客の意向確認を義務付けている。違反行為を把握した場合、保険会社は30日以内に金融庁に届け出なければならず、違反行為をした社員の営業資格を国が取り消すこともある。郵便局が主に販売するのは貯蓄型の生命保険。このうち、養老保険は80歳まで、終身保険は85歳まで加入できる。かんぽ生命からの業務委託で取り扱っており、毎年200万件前後の新規契約がある。

2019年03月18日 06時00分
西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/495016/