新著に込めた思いを語る駒井さん(高島市で)
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 ◇高島・駒井さん アイヌ搾取の史実 本に

 在野の近江商人研究家として知られる高島市安曇川町の元中学校教諭、駒井正一さん(68)が、新著「アイヌ民族の戦い」を自費出版した。若い頃から人権問題に強い関心を抱いていたうえ、研究の過程で、北海道で漁業経営に携わった近江商人がアイヌ民族を搾取していた事実を知ったことが、執筆・出版のきっかけになったという。(宮明敬)

 ◇漁場連行 共同体崩壊の一因

 江戸時代に東北地方に進出した高島商人の末裔(まつえい)でもある駒井さんは、35年の研究生活の中で、近江商人に関する五つの著書を世に出してきた。5冊目の「近江商人の漁業経営」(2014年)で、近江商人が北海道の発展に寄与する一方、アイヌの収奪にも関わっていた事実に初めて触れた。

 その後、幕末の探検家、松浦武四郎の日誌や「飛騨下呂通史」の記述から、北海道北部や東部の漁場を開拓して豪商となった豊郷出身の藤野喜兵衛家が、アイヌの労働者を遠方の漁場へ強制的に連行し、奉行所から「アイヌの遣ひ方に非道がある」と改善命令を受けていたことを知り、続編の出版を決意。室町時代から近代までのアイヌ民族史の中で描こうと努めた。

 著書では、強制連行がアイヌの共同体を崩壊させる一因になったと指摘。アイヌが数々の反乱を起こした背景には、商人らの収奪や松前藩の差別政策があったとしている。差別は近代に入っても続いたという。

 駒井さんがアイヌ民族の研究を始めたのは約25年前。蝦夷(えぞ)地における近江商人の活動を調べていた縁で、北海道へ修学旅行に向かう高校生向けに、講演を頼まれたのがきっかけだった。

 「ようやく一つの形にできた。近江商人の活動にも、北海道開拓史にも、功罪両面があったことを知ってほしい」と話している。

読売新聞 2019/03/29
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