https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190509-00010000-nknatiogeo-sctch
■考えられていたより、はるか前にシロナガスクジラが巨大化した可能性浮上
 シロナガスクジラは、地球上に存在した生物の中で一番大きい。
では、シロナガスクジラはいつごろ、どうやってそんな巨大な体を手に入れたのだろう。
イタリアの湖から出土した化石の分析から、その手がかりが見えてきた。

 2019年4月30日付けの学術誌「Biology Letters」に掲載された論文によると、その巨大なシロナガスクジラの頭蓋骨は、
今まで見つかった化石の中でもっとも大きいもので、頭蓋骨から推定される体長は26メートルだ。

 現在のシロナガスクジラには、体長30メートルを超えるものもいる。化石のクジラはそれに比べれば小さく、推定された体長自体は
驚くほどの大きさではない。科学者が驚いたのは、150万年前の更新世前期の海に、すでにこの大きさのクジラがいたということにある。
何しろ、これまでシロナガスクジラが登場したと言われてきた年代よりもずっと古いのだ。

 論文の共著者で、ブリュッセルにあるベルギー王立自然史博物館の古生物学者、フェリックス・マルクス氏は
「これほど昔にこんな巨大なクジラがいたということから、巨大クジラにはかなり長い歴史があると考えられます。
突然進化して巨大化したとは考えられません」と話す。

■鍵となる化石
 シロナガスクジラがどのように大きな体を手にいれたのかを突き止めるのは簡単ではない。
というのも、250万年前頃の巨大クジラの化石はめったに見つからないからだ。
この期間、地球は何度も氷河時代を経験した。氷河時代には、大量の水が凍結し、海面はかなり下がったと考えられている。
当時、クジラの死骸が陸地に流れ着いたとしても、現在では海面よりずっと下になってしまっているからだ。

 研究の根拠となっている150万年前のシロナガスクジラの頭蓋骨の一部の化石は、2006年、イタリア南部の町マテーラ近郊で見つかったものだ。
農家が、畑に水を引いていた湖の岸辺から、巨大な椎骨が突き出ていることに気づいた。
イタリア、ピサ大学の古生物学者ジョバンニ・ビアヌッチ氏のチームは、農作業に影響を与えないよう、3年がかりでその骨を掘り出した。

 化石は、当初からシロナガスクジラである可能性が指摘されていた。
今回、新たに行われた解剖学的調査でシロナガスクジラであることが確認された。
マルクス氏は、この化石から、巨大クジラがこれまで考えられてきたよりもゆっくり登場したことがわかるかもしれないと述べる。

 2017年のある研究では、化石も含めた既知のヒゲクジラの大きさをすべて分析している。
その結果が示唆しているのは、クジラの大型化は450万年前ごろから始まり、30万年前ごろにクジラは急激に巨大化したらしいというものだ。
そこでマルクス氏は、新たなヒゲクジラの化石を加えて分析を続けた。
大型化が始まった時期として、「もっとも可能性が高いのは、360万年前ごろでしょう。あるいは、600万年前くらいから起きていたとも考えられます」

■化石からわかること
 前述の研究で最初の分析を行ったのは、米シカゴ大学のグレアム・スレーター氏だ。
同氏は、360万年前とするマルクス氏の研究結果は、自身が導き出した範囲とも一致する。
もっと以前からクジラが巨大化していた可能性もあるが、研究から導き出された「360万年前」は妥当な線ではないかと述べている。

 360万年前と言えば、地球の海水温が下がった頃だ。クジラが得る食料も変化しただろう。
スレーター氏は、冷たい水が上がってくる場所で獲物の密度が非常に高くなり、それが巨大クジラの誕生につながったと考えている。
ただし、マルクス氏は「シロナガスクジラの巨大化は360万年前よりも以前から起きていた可能性もある」としており、この点で
スレーター氏の意見とは異なっている。

 マルクス氏は、今回の分析が、直接、彼の仮説を裏付けるものでないことは認めている。巨大クジラの化石は収集自体が難しく研究も難しい。
クジラの大きさの進化について正しく知るには、さらなる研究が必要だ。

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