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■新たな沈み込み帯誕生の可能性も、ポルトガル沖の大地震から50年越し
 大西洋のポルトガル沖で1969年、大きな地震が起こり、津波が発生した。
この謎の現象は、ジョアン・ドゥアルテ氏を長年にわたり悩ませてきた。震源地の周辺には、何の変哲もない平らな海底が続いているだけなのだ。
こんなところでなぜ地震が起こったのか。
ポルトガル、リスボン大学ドン・ルイス研究所の海洋地質学者として、ドゥアルテ氏はこの海底で何が起こっているのかを突き止めようとした。

 そして地震発生から50年後の今年、ようやくその解答にたどり着いたかもしれない。
ポルトガル沖のプレートの下層が剥離し始めているようだ、というのが氏の説だ。
さらにここは、あるプレートが別のプレートの下に潜り込む、いわゆる沈み込み帯が新たに形成される場所になるかもしれない。
ドゥアルテ氏は、この現象を示したコンピューターシミュレーションを、今年4月の欧州地球科学連合(EGU)の学会で発表した。
もしこれが本当ならば、海洋プレートが剥離しているところをとらえた初の研究になる。
地質活動により、将来的に大西洋が縮小し、欧州がカナダに接近するという説があるが、これはその始まりとなりうるだろうか。

「とても興味深い話です」。研究チームの一員ではないが、EGUの発表を聞いたノルウェー、オスロ大学のファビオ・クラメリ氏は言う。
また、ドゥアルテ氏の説にはかなり説得力があるものの、シミュレーションのモデルはさらに検証を重ねる必要があるとも語った。
指の爪が伸びるほどの速さでしか変化しない自然現象のデータを利用するのは、簡単なことではない。
「かなり大胆な説です」。研究の結論についてドゥアルテ氏はそう述べ、まだやるべきことは多いと認めた。
「すべての問題に対する答えではないでしょうけれど、何か新しいものがここにはあると思います」

■プレートテクトニクス最大の謎
 地球のプレートは、ゆっくりとではあるが常に移動している。ある場所ではプレート同士が離れ、別の場所では衝突を繰り返している。
地球誕生から45億5000万年の間に、少なくとも3回は大陸同士が集まって巨大な超大陸を形成し、再び分裂していった。
プレートを動かしている原動力は沈み込み帯だ。海洋プレートはこの沈み込み帯から地下深くへ潜り込み、そこで岩をリサイクルする。
それにともない、大陸も移動する。では、沈み込み帯はどのように生まれるのだろうか。ドゥアルテ氏は言う。
「それが、プレートテクトニクス最大の謎のひとつなのです」
「点と点を結ぶような作業でした」。ドゥアルテ氏は自身の研究についてそう語った。
最初の点は、1969年の地震の震源地だった。そこは「ホースシュー深海平原」という、とても地震など起こりそうにない場所だった。
あたりには断層らしきものも、ねじれた地形も、海底火山も、とにかく地質の変動を起こしそうなものは何もない。

「水深4800メートルの海底に大草原がずっと続いているような感じです」。
フランス、ブレストにあるブルターニュ・オキシダンタル大学(UBO)のマルク・アンドレ・グッチャー氏は言う。
地質学者のグッチャー氏は、この海域を調査したことがあり、EGUの発表を聞いていた。
2012年には、ある研究チームが地震を利用する調査を実施した。
地中を伝わる地震の波は、地質の温度や組成が変わると変化する。それによって、1969年の地震が起こった場所の真下に、
何か密度の高い塊が存在していることがわかった。さらに分析を進めると、沈み込み帯が生まれているという兆候もあった。
しかし、海底にはそんな兆しがまったく見られないので、ドゥアルテ氏は最初、塊の存在は誤りではないかと考えた。
だがその見方を変えたのは、リスボン大学ドン・ルイス研究所の博士研究員キアラ・シビエロ氏らが2018年に公開した、高解像度の断層撮影画像だ。
奇妙な塊はそこにもあったのだ。
「これで、何かがあることを100%確信しました」と、ドゥアルテ氏は言う。別の研究でも、地下250キロまで伸びるこの塊の上で小さな揺れが検出された。

 カギは、プレート中央部の一見何も起こらなさそうな層にあるとドゥアルテ氏は語る。
過去の研究では、海洋プレートに網の目のように走る亀裂に入り込んだ海水が岩石と反応し、それらを淡い緑色の鉱物に変化させることがあると
示唆されている。この過程は、蛇紋岩化作用と呼ばれている。

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