2019年5月25日 夕刊


 性の在り方にとらわれず、誰もが認め合う社会に−。性的少数者(LGBT)を支援する埼玉県の団体「レインボーさいたまの会」が、当事者への理解を広げようと、交流会や講演会の開催など幅広く活動している。代表の加藤岳(たける)さん(41)は「LGBTが身近な存在だと知ってほしい」と話している。

 四月下旬、同県川口市のカフェで開かれた交流会。当事者約十人が思い思いの名前で自己紹介した。体と心の性が異なり、職場で理解されず転職を繰り返したトランスジェンダー(48)や、他者に性的な興味関心を抱かないアセクシュアルの女性(53)。互いの体験や悩みを告白し、「大変だったね」「無理して話さなくていいよ」と声を掛け合った。参加したゲイの男性(41)は「普段話せない悩みを安心して相談できる。カジュアルな雰囲気なので、学生や保護者にも気軽に足を運んでほしい」と語った。

 加藤さんが会を設立したのは二〇一八年。家族が、トランスジェンダーであることを理由に職場で退職勧奨を受けたのがきっかけで「性自認や性的指向で差別されない社会をつくりたい」と思い立った。徐々に交流の輪を広げ、現在は当事者や支援者、弁護士約百人で活動している。

 ツイッターやフェイスブックで告知し、県内十数カ所で交流会を開いているほか、制度に詳しい有識者を招いた勉強会も不定期で開催。自治体や企業、学生向けの講演会も精力的に行う。

 埼玉県内には、性的少数者らのカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の導入自治体がまだなく、県と県内全六十三市町村に順次、導入を求める要望書の提出も始めた。

 加藤さんは「性的少数者が議員になったり、五輪憲章に『性的指向による差別の禁止』が盛り込まれたりするなどLGBTへの関心は高まりつつあるが、まだまだ否定的な意見も根強い。当事者が集えるコミュニティーを増やし、孤独を感じることがないよう活動を続けたい」としている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019052502000288.html