【中国撤退リスク】中国から撤退できない日系企業の苦悩

■4年前から、撤退の際には従業員に退職金に当たる経済補償金を支払わなければならなくなりました
上海市郊外にある日系企業の工場
そこで異変が起きていました。
「日本の会社はどうしたんですか?」「倒産したんだよ。
何も知らない、裁判所にでも聞きにいけよ。」
かつて、この場所で操業していた日系企業は今年春、夜逃げ同然で工場を閉鎖していました。
電気部品を作っていたこの企業は今から16年前に中国に進出。
しかし、人件費や材料費の高騰で経営難に陥っていきました。
この企業の元社長です。資金繰りが限界に達し、中国の従業員たちに撤退の意思を伝えました。
従業員たちは退職金が全額支払われる見込みがないことを知ると激しく反発しました。
日系企業 元社長
「取り囲まれて、彼らは(私を)解放するとお金を請求する者がいなくなるということで、そこから一歩も動けない状況に陥りました。」
社長はホテルの一室に閉じ込められ、従業員たちに金を払うまで日本に帰さないと脅され続けました。
深夜に至るまで呼び鈴を鳴らされ、精神的に追い詰められていきます。
元社長が録画した音声
「逃がしたら大変だからな、そんなことはさせない。」
日系企業 元社長
「恐怖はありましたね。
異国の土地ですし、言葉もできませんし、たったひとりという思いがありましたので。」
社長は破産手続きを済ませ、負債を整理してから帰国するつもりでしたが全く身動きが取れませんでした。
軟禁から20日。
一瞬の隙をついて社長は逃亡。
命からがら日本に逃げ帰りました。
しかし、破産手続きができなかったため、ばく大な負債だけが残ってしまい日本の本社は倒産に追い込まれたのです。
日系企業 元社長
「(会社を)閉めたくても閉められない、もうお手上げ状態で何もかもパーになってしまいました。」
どうすれば致命的なダメージを受けずに撤退できるのか。
撤退をサポートするコンサルティング会社があります。
「今の会社の経済状況からすると、当然、資金的に支払えない。
このままほっといて逃げだいしたと。」
「夜逃げはまずいですね…。」
20年にわたって中国に進出する日系企業を支援してきましたが、ここ数年、撤退の相談が増えています。
企業が撤退しようとしても一筋縄ではいきません。
4年前から、撤退の際には従業員に退職金に当たる経済補償金を支払わなければならなくなりました。
もし払えないと労働争議に発展してしまいます。
地方政府も税金をとれる最後のチャンスだと考え帳簿の調査が終わるまで撤退を認めてくれず、長期化して負債だけが増えていきます。