https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190621/k10011962241000.html

最近、「電話が怖い」という若い人の声をよく耳にします。日常的に電話を使ってきた世代にとっては
「え、なんで?」と思ってしまうようなこの現象。苦手意識が広がる背景を取材しました。

かけるのもかかってくるのも嫌

まずはSNS上で調べてみました。すると思っていた以上に「電話が苦手」と吐露する人たちの声が多くありました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190621/K10011962241_1906211009_1906211010_01_03.jpg

電話が苦手な理由とは

「電話が苦手」とは一体、どういうことなのでしょうか。大阪市に本社がある、大手食品会社のグループ会社で働く20代の女性2人が話を聞かせてくれました。

「学生時代は自宅に電話がありましたが、ほとんど使っていなかったので固定電話で話すこと自体に緊張感がありました。
新入社員として配属された当初は電話を取っても声が出ないこともありましたが、たくさん取るようにしたら慣れました」

「新人の頃に電話の実技研修を受けましたが、あらかじめ用意されたフレーズを読み上げることしかできなくて不安でした。
いまでは用件を簡潔に伝えることができるようになり、対面のコミュニケーションも上達したように思います」

2人とも10代の頃からガラケーやスマホを持っていましたが、使うのはメールやSNSがほとんどで、
電話は仲のいい友人と話す程度でした。そのため知らない人と電話で話す機会は社会に出るまでほとんどなかったそうです。

それでも電話は大事

取材に応じてくれた女性社員が働く会社を含む大手食品会社のグループでは毎年、新入社員向けの研修で
電話応対のロールプレーイングを行っているほか、ここ数年はすべての従業員を対象に社内で電話応対の検定も実施しています。

電話の研修や検定を担当する山下みどりさんはこう話します。

「コミュニケーションの手段は電話以外にもメールやSNSなど増えていますが、ビジネス社会では電話がいまだに重要なツールです。
電話応対が従業員の評価だけでなく会社全体の評価につながる可能性もある。だからみんなが使いこなせなければならないんです」

求められるのは応用力

さらに専門家は、コミュニケーションの手段が多様化した結果、電話の重要性は以前よりもかえって高まっていると指摘します。
前で紹介した食品会社を始め、全国の企業などで電話応対の検定を行っている日本電信電話ユーザ協会の吉川理恵子技能検定部長はこう話します。

日本電信電話ユーザ協会 吉川理恵子さん

「仕事でメールやチャットを使うのが当たり前になった結果、商品の受発注や簡単な問い合わせはメールで、
それ以外の複雑な案件は電話でと、使い分けるのが一般的になりました。その結果、電話は困った案件や高度な案件を扱う場に格上げされ、
マニュアルどおりだけにとどまらない応用力が求められるようになったんです」

応用力が求められるビジネス社会での電話。しかし、最近は職場に固定電話がないケースも増え、先輩や上司の電話応対を見聞きして
自然と学ぶという機会は失われつつあるそうです。

吉川さんによると、実際に、客からのクレームの電話に対して社員が「証拠がほしいのであなたのクレームの内容をメールで送ってほしい」
と言ったり、いらだった顧客から「あなた一体何歳なの?」と聞かれて「個人情報なのでお答えできません」と応じたりして、
大きなトラブルになるということがあったそうです。

込み入った案件、複雑な案件にうまく電話で対応する力はどうすれば身につくのでしょうか。

大切なのは聞き方

吉川さんは、まず先方の話をよく聞いて相手の意図をくみ取ることが大事で、『私はここまでわかっていますよ』と
相手に伝えるためにあいづちや繰り返しも欠かせないといいます。

大切なのは話し方よりも聞き方、だそうです。

納得できますが、なかなか一朝一夕にはいかなさそうです。そこで電話が苦手な人がいますぐに実践できることを聞いてみると。
大切なのは聞き方

「電話中は電話機を見て話しましょう。そうすると、電話の向こうに人がいると実感できます。相手は鬼ではない、
おなじ人間だから怖くありません。もし困ったら『わかる者に代わります』と言えばいいんです」(吉川さん)