朝日が煽って国会質疑という「#KuToo」運動への溜息
週刊新潮 2019年6月27日号掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/06280558/?all=1

〈いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい〉

 今年1月、葬儀場でアルバイトしていたグラビア女優、石川優実嬢(32)がそうツイートしたところ、瞬く間に拡散。
「靴」と「苦痛」をかけた「#KuToo」なるハッシュタグ(検索の目印)が登場し、署名運動まで始まった。
ここまでなら、ふーん、てなもんだが、6月12日付の朝日新聞朝刊では石川嬢本人の写真と、「身近なことにも、性差別がある」なる主張を掲載。
さらに朝日は女性従業員の靴に関する各社の規定について「調査」し、15日の朝刊社会面でデカデカと記事にした。

 ジャーナリストの徳岡孝夫氏が首を傾げる。

「朝日新聞らしさが出ていると言えばそれまでですが、そんなに大きな問題として報じるべきことなのかは疑問です。
服や靴の規定なんて女性に限った話ではないですしね。朝日はまあ、女性解放運動に大きな関心があるのでしょう」

 その女性の側からも違和感を表明する声が。脚本家の橋田壽賀子さんは、
「会社が服装などをいちいち決めることへの疑問はありますが、それが女性差別だとは思いません。こじつけもいいところですよ」
 と、断ずる。

「そんなにヒールが嫌なら履かなくたっていいんじゃないでしょうかね。“自分とは意見が違う”って辞めればいいじゃない。
その会社に自分で決めて勤めた以上は従うか辞めるかしかないんじゃないですか?」

◾女の敵は女
 ファッション評論家の堀江瑠璃子氏によると、アメリカでは、1970年代から80年代にかけて似たような現象が起こったという。
「当時、アメリカでは女性の社会進出が進み、女性解放運動が盛んでした。で、靴の問題だけではなく、女性の体を締め付けるもの全般に反発が高まり、
ブラジャー焼き捨て事件が起こったりしたのです」
 と、堀江氏は言う。

「ただ、今回の件は女性差別云々ではなく、会社が従業員の服装を細かく規定するという点が問題なのだと思います。
おしゃれというのは常に我慢を伴うものです。ブラジャーだって、多少きつくても胸の形、上半身を綺麗に見せるために着けますよね。
その我慢をするかどうかは個人の美意識によるもので、会社がとやかく言うことではない」

 数十年来の「ハイヒール廃止論者」だという評論家の呉智英氏は、
「ハイヒールは力学的に見てつま先に負担がかかるのは明らかだし、歩くのも大変。不健康で非実用的なものは、男だろうと女だろうとただちに止めるべきです。
私はラクになることは賛成。しかし、例えば、冠婚葬祭の場で、ラクでだらしない恰好でいるのはマズイ。結局、TPOですよ」
 とした上で、こう話す。

「男女問題で言えば、むしろハイヒールは女性が進んで履いてきた経緯がある。愚行にくみしてきたわけです。
ハイヒールは男の目を意識して作られ、履かれてきたもので、女性が我も我もと求めてきた。
であれば、社会や男を叩く前に、そうした女性を叩かなければならないはずです」
 女の敵は女。しかし、それでは「運動」が成り立たないのだ。

◇ヒールやパンプスを履く女性たち
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◇このつぶやきが発端となり、#KuToo運動として展開 (グラビア女優の石川優実のTwitterより)
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