0001ごまカンパチ ★
2019/07/01(月) 22:54:07.87ID:f2dnPVjp9■環境の違いにより遺伝子の働き方が変化
米オレゴン州中部、カスケード山脈。スリーシスターズ連峰の高地にある静かな水たまりに行くには、山を歩き、スキーで移動しなければならなかった。
水中には、他に大したものはなかったが、奇妙な見かけのサラマンダーがいた。
「そのサラマンダーの幼生が、とても痩せた体と大きな頭をしているのに気づきました」と米国地質調査所の生物学者スーザン・ウォールズ氏は振り返る。
そこには両生類のユビナガサラマンダー(Ambystoma macrodactylum)の幼生がいたのだが、よく見ると、どの個体も頭と顎が通常よりはるかに大きかった。
のちに、その大きな口は、非常に特殊な目的に役立つことが判明した。共食いである。
この大きな顎には、牙のように大きく成長した鋤骨歯(じょこつし)が生えていた、と同氏は初期の論文に書いている。
通常、ユビナガサラマンダーの鋤骨歯は、前歯列の後ろにある小さな突起にすぎない。大きな鋤骨歯は、共食いをするのには都合がいいのだろう。
だが、そもそもなぜ共食いをするのだろうか?
陸に上がる前の幼生期、ユビナガサラマンダーは「変形」することがある。頭と顎が体の割に大きくなり、鋤骨歯はより目立つようになる。
もし十分な食料と水がある場合、こうした変形は起きない。
だが、何日も餌が不足したり、すぐに池から出る必要があったりする場合(比較的乾燥する春や夏など)には、頭や歯が大きく「変形」するし、
あとで元に戻ることもある。
口や牙が大きいほど、より大きな餌を食べられる。大きな餌には、自分の仲間や兄弟も含まれる。
高タンパクの食事によって、餓死を回避し、成長を早めて、池が干上がる前に陸に上がれるようにするのだ。
このように、環境により動物の性質が変化することを「表現型の可塑性」という。ユビナガサラマンダーだけでなく、さまざまな両生類や動物でも確認されている。
「頭の大きな形態と小さな形態がある昆虫、歯のある共食い形態を持つ線虫、増えすぎると共食い形態になる原生生物(単細胞生物)などがいます」
と米ノースカロライナ大学の生物学教授デイビッド・フェニック氏は説明する。
同氏は、トラフサンショウウオやスキアシガエルにおける表現型の可塑性を研究してきた。
表現型の可塑性の背後にあるメカニズムの解明は、両生類を保護する上で重要である。
両生類は、すでに全世界で43%も減少しており、脊椎動物では最も速く多様性が失われている。
■餌が少ないと共食いになる
ほとんどの両生類は、最初の数週間は水中で過ごし、成体になると陸上で暮らす。表現型の可塑性が起きるのは、水中で過ごす幼生期だ。
ユビナガサラマンダーの幼生は、オタマジャクシによく似ている。通常は、共食いなどしないが、攻撃的ではある。
「直接観察している間に、幼生同士が噛み付くところをたくさん見ました」と米カリフォルニア州立大学イーストベイ校の生物学准教授
エリカ・ワイルディー氏は話す。同氏も、ウォールズ氏と同じユビナガサラマンダーを研究したことがある。
ワイルディー氏は、ユビナガサラマンダーの幼生の攻撃性が、食物にどう影響されるかを研究していたとき、あることに気がついた。
隔絶された山にいる個体は、餌と水が手に入りやすい谷に住む個体とは、行動が異なっていたのだ。
谷の個体は、山の個体ほど攻撃的ではなく、大きな顎に疑似的な牙を持つ「共食い形態」にはひとつもならなかった。
同氏の論文によると、山で孤立したユビナガサラマンダーの攻撃性と共食い行動は、栄養が乏しい環境によるストレスが重要な要因だという。
また、共食い形態の個体は、通常の餌である動物プランクトンを食べる個体に比べ、成長速度が速いように思われた。
おそらく、より速く成長して、池が干上がる前に陸に上がる必要があったからだと同氏は考えている。
池が干上がれば、まだ幼生のユビナガサラマンダーはすぐに死んでしまう。
さらに、ウォールズ氏によると、共食い形態のユビナガサラマンダーがより広々とした生息地に移動し、再び通常の餌を食べるようになれば、
形態も通常のものに戻るという。
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