ドライバーの熱中症予防 職場での十分な対策を

 平成30年は猛暑の影響からか、陸上貨物運送事業での「熱中症」による死亡事故が予想以上に増加した。平成28年、29年は熱中症などの「高温・低温物との接触」での死者数がゼロだったが、平成30年は7人と大きく増加している。トラックドライバーは運転だけでなく、物流センターや倉庫で作業をするケースも少なくないだけに、熱中症にはくれぐれも注意したい。熱中症を防ぐにはどのようにすればいいのか、専門家などに話を聞いた。

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 陸災防によると、平成30年に陸運業で熱中症で死亡したケースは4件。「タンクローリーの内部で発見、死亡した」「倉庫内を清掃中、ふらつきが発生。帰宅したが、翌日に死亡が確認された」「荷崩れした荷物の復旧作業中に体調が悪くなり、移動した休憩室で倒れて死亡」「体感温度の高い倉庫内で作業中に体調不良を訴え、後日死亡」というケースで、7月から9月に集中している。

 厚労省では「STOP! 熱中症クールワークキャンペーン」を5月1日から9月30日まで実施し、職場における熱中症の予防徹底を図っている。同省では「職場に暑さ指数(WBGT値)計を準備していないために作業環境の把握や作業計画の変更ができていない例や、熱中症になった労働者の発見や救急搬送が遅れた例、事業場における健康管理を適切に実施していない例が見られる。職場における熱中症対策が十分に浸透していないことが考えられる」と指摘している。

 効果的な熱中症の予防対策について、神奈川県済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区)患者支援センター長・栄養部の谷口英喜部長に話を聞いた。

 「熱中症を避けるには、暑い・蒸し暑いをなくすのが一番。倉庫内であればエアコンの導入や涼しい服装が大切。蒸し暑い中で、どのぐらい作業できるかは人によってさまざま。汗の量が1リットルを超えると危なくなる。これはだいたい下着を取り替えたくなるぐらいの汗の量」と谷口部長は指摘。「その次に大切なのが水分補給。熱中症にかかったら、効果的なのが経口補水液。一般的によく知られているのが大塚製薬のOS─1(オーエスワン)など。塩分が入っていた方がいいし、失った汗の量と同じぐらい飲むのがベスト。こういったものを常備しておき、少しふらつくと思ったら飲む。前もって飲んでいても効果はない」と説明する。

 谷口部長は「長時間運転した後は集中力を欠いているので、休憩なしで作業に入るのは危ない。熱中症は十分な休息が取れていないときにも発生する。できれば1時間ほど休んだ後に、次の作業の移るのが好ましい。居眠り運転と思われていたものの中には、熱中症が疑われるものもあるかもしれない」と分析。「また、アルコールを飲んだ翌日も熱中症になりやすい。脱水状態になっていることが多く、アルコールはひかえた方がいい。生活習慣病の人も熱中症になりやすい。太っていたり、糖尿病、高血圧であるとなりやすい。なりにくいのは筋肉質の人」という。

 同部長は「作業を連続して続けるのではなく、30分作業したら10分休憩して水分補給する。そしてまた30分作業する、ということを繰り返してほしい」と訴える。

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2019年7月8日  物流ウィークリー