参院選後に復活画策の議員年金 税金負担は300億円か
7/9(火) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190709-00000005-pseven-soci&;p=1

 老後2000万円不足問題がくすぶる中、国民はなんとか老後資産を守りたいと生活費を節約して生活防衛に頭を痛めている。ところが、そんな国民の痛みを横目に、政府・与党内では廃止したはずの「議員年金」を参院選後に復活させ、国民の税金で議員の老後の生活保障を手厚くしようとひそかに準備を進めていた。

「議員特権」と批判された国会議員と地方議員の退職年金は公的年金とは別の制度で、かつては「国会議員年金」は在職10年で年間約412万円、「地方議員年金」(在職12年以上で受給資格)は都道府県議に平均約194万円、市議なら平均約103万円が退職後に支給されていた。
 しかし、小泉政権の年金改革で公的年金の保険料アップと年金カットが決まると、「議員だけ特権年金をもらうのはおかしい」という批判が高まり、2006年に国会議員年金、地方議員年金は2011年に廃止された。
 特権を復活させる動きが始まったのは、前回総選挙(2017年10月)で自民党が大勝した直後からだ。
「若くして国会に出た議員は退職したら全員生活保護だ。ホームレスになった人もいる。こんな国は世界中にない」
 自民党の竹下亘・元総務会長がそうぶちあげると、手始めに地方議員の年金復活にとりかかった。同党地方議員年金検討プロジェクトチームで法案をまとめ、昨年12月に自公幹事長会談で法整備の方針で一致した。手始めに地方議員の年金復活にとりかかった。同党地方議員年金検討プロジェクトチームで法案をまとめ、昨年12月に自公幹事長会談で法整備の方針で一致した。
◆税金負担は計300億円
 自民党がまとめた案によると、新たな地方議員年金には年間ざっと200億円の税金が投じられる。
 簡単にいえば、地方議員は支給額の低い国民年金を脱会し、自治体職員と同じ地方公務員共済に加入させることで、年金保険料の半分を税金で負担して手厚い給付を受けられるようにする。対象の地方議員は3万3000人だ。ちなみに健康保険も国保から共済になるため、議員が払う毎月の健康保険料は半額に減る。こちらの税負担は年金とは別に100億円かかる。政治学者の後房雄・愛知大学教授が指摘する。

「会社勤めをしていない自営業者など一般の国民は国民年金でやっている。地方議員も被用者ではないから国民年金が当たり前。それを自分たちだけ特別扱いで共済に入れろというのは特権意識以外の何物でもない。しかも、制度を作るのは議員だから、お手盛りの法改正をしようとしている」
 完全な特権復活だ。もちろん、国会議員たちが地方議員にだけ“うまい汁”を吸わせるはずがない。その先にあるのが国会議員年金の復活だ。
 言い出しっぺの竹下氏(2000年初当選)も、「若くして国会に出た議員は」と国会議員の年金復活を念頭に発言しており、知事など自治体の首長や公務員には退職金や年金があるのに、「議員だけ貧乏でいいというわけではない。大事なのは議員に仕事をさせることだ」と語っている。
 ちなみに国会議員年金は廃止時点(2006年)で勤続10年以上だった議員には受給資格(15%減額)があり、1993年初当選で勤続13年だった安倍晋三首相は年約350万円、勤続24年(1979年初当選)の麻生太郎・副総理兼財務相は年450万円近くの議員年金を引退後に受給できる計算だが、2000年初当選の竹下氏はもらえない。
 現役議員の多くが「総理も副総理ももらえるなら、オレたちもほしい」とうらやましがっていることは容易に想像できる。
「多くの先進国には国会議員年金の制度がある。廃止されたのは日本だけ。地方議員が共済に加入できるようになれば、議論の流れは次に国会議員も国家公務員共済に加入できるようにする方向に向かうはずだ」(前出の自民中堅)
 だが、日本の国会議員の歳費は年間約2200万円と世界一の高給取りだ。それに加えて年1200万円(毎月100万円)の非課税の文書通信交通滞在費まで支給される。
 爪に火を灯すように老後資金をためている国民の税金からこれだけもらいながら、「議員だけ貧乏」だから議員年金復活で老後資金までせしめようとは、盗人猛々しいにもほどがある。
※週刊ポスト2019年7月19・26日号