【北京=中川孝之】中国政府は24日午前、「新時代の中国の国防」と題する国防白書を発表した。白書は、トランプ米政権が軍拡路線を採り「世界の戦略的な安定を損ねている」と批判した。軍トップの習近平シージンピン中央軍事委員会主席(国家主席)の指導で「戦争ができ、戦争に勝てる軍隊」を作ると強調し、米国の覇権に挑戦する意図を鮮明にした。

 中国の国防白書発表は2015年以来、4年ぶりで、習政権では3回目となった。

 白書は、新時代の中国軍は、習氏の「強軍思想と軍事戦略思想」に基づき建設されると表明した。また、国防政策は「防御的」で、「中華民族は一貫して平和を愛する」と主張した。

 米国について「一国主義政策を採り、大国間の競争をけしかけ、国防費を大幅に増やして、核や宇宙、サイバーやミサイル防御などを強化している」と指摘した。15年の前回白書では、オバマ前政権が進めた外交や軍事の重点をアジア太平洋地域に移す「リバランス(再均衡)政策」に警戒感を示したが、批判は抑制的だった。

 日本に関しては、安倍政権の名指しを避けつつも、「軍事・安全政策を調整し、『戦後体制』の突破を図っている」と分析した。その上で、沖縄県・尖閣諸島は「中国の固有の領土」だと明記し、周辺海域への公船派遣を「法に基づく国家主権の行使」だと正当化した。 南シナ海で進める軍事拠点化については、「島嶼とうしょでは防衛に必要な施設を設置している」と説明した。

 台湾問題では、独立志向の強い民進党の蔡英文ツァイインウェン政権を念頭に、「何者かが台湾を中国から分裂させようとするなら、いかなる代償も惜しまず、国家統一を守る」と、武力行使を排除しない考えを改めて示した。

 習政権は、中国軍を今世紀半ばまでに米軍に対抗する「世界一流の軍隊」とするとの目標を掲げる。白書でも、来年までに軍隊の情報化能力などを大幅に強化し、35年には軍隊の現代化を実現すると表明した。最新兵器にも言及し、米軍事拠点のあるグアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「DF(東風)26」や、国産最新鋭ステルス戦闘機「J(殲)20」などを挙げた。

7/24 読売新聞
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